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深夜の展示場、機械仕掛けのコンパニオン

2,533 文字 約 6 分

展示場でアンドロイドがいたらこうだよなーと思う。

あらすじ

複数の企業が集まる展示会ではコンパニオンが企業から派遣され、各企業のブースの前で企業のビラやトートバッグ・ノベルティを配布して名刺をもらったり、ブースに呼び込んだりすることが行われている。これまでそれらはアルバイトで行われていたが、人型アンドロイドの登場で一気に置き換わった。今時は名刺交換は行われず、入場に必要なQRコードを企業が読み取るだけで個人の情報を得ることができる。アンドロイドなら、わざわざスマホを使ってスキャンする必要がないため簡単だ。
国際会議場をまるまる貸し切って行われるIT系の展示会でも、同様にアンドロイドのコンパニオンが導入されていた。この展示会に来る客層はほとんどが男性のため、アンドロイドは胸が大きく顔の可愛いモデルが使われる。アンドロイドは近くを通った参加者を認識して声をかけに行き、ビラやノベルティを配る。そしてブースの簡単な解説をしつつ、その間に参加者が首から下げているQRコードを読み取る。解説が終わり持ち場に戻るときには情報の取得が済んでいるという寸法だ。
その展示会にアンドロイドを派遣している会社は、格安でコンパニオンのアンドロイドを派遣することを売りにしている。その実態は、巷に流通している格安の中古セクサロイドを清掃し、最低限の動作と会話を行うだけのプログラムを入れて提供するもので、原価はかなり安い。万が一を考えセクサロイドのプログラムは完全に消され、性的反応もしないようになっている。参加者を見かけるたび同じ言葉をかけ、同じ会話をし、持ち場に戻ることの繰り返し。
ある男性はその展示会の会場設営の夜勤バイトをしていた。少し搬入・設営作業が残っているが、ほとんどは日中のバイトがやったようですることがない。暇なので企業のブースを見て回る。各ブースの前には電源オフの状態のコンパニオンアンドロイドが立っている。そして、このアンドロイドに何かイタズラを仕掛けようと思い立つ。狭い通路の途中にある小さい企業ブースなら誰も見回りに来ないので、何をしても大丈夫だと思いアンドロイドの電源を入れる。


登場人物

コンパニオンアンドロイド(型番不明)
元は風俗店や個人向けに販売されていたセクサロイドの中古機体。展示会のコンパニオンとして再利用されている。
髪は艶やかなプラチナブロンドのロングヘアで、毛先が緩やかにカールしている。瞳は作り物めいた鮮やかなブルー。顔立ちは万人に好かれるよう整えられた、派手な美人顔。
服装は企業のイメージカラーである白と青を基調とした、露出度の高いコンパニオン衣装。光沢のあるエナメル素材のボディスーツで、胸元が大きく開いており、バレーボールのように膨らんだ巨大な乳房の谷間を強調している。下半身はハイレグに近いカッティングで、その上から極端に短いマイクロミニスカートを着用。脚には白のニーソックスとピンヒールを履いている。
肌は高級シリコン製で、見た目も触り心地も人肌に近いが、体温機能はオフにされているため冷たい。

男(主人公)
展示会の設営バイトをしているフリーターの男。20代半ば。作業着姿で、首からスタッフパスを下げている。

本文

 深夜の国際展示場は、不気味なほど静まり返っていた。
 広大なホールには、翌日から開催されるIT系展示会のブースが迷路のように立ち並んでいる。設営作業はあらかた日中のうちに終わっており、夜勤のバイトとして雇われた俺の仕事は、搬入の残りを片付けることと、万が一のトラブルに備えて待機することだけだった。
 つまり、暇だった。
 広い会場内を見回るふりをして、俺は企業のブースが並ぶ通路を歩いていた。どのブースも無人で、照明も落とされているため薄暗い。だが、ブースの前に立つ「彼女たち」の姿だけが、非常灯の薄明かりの中に白く浮かび上がっていた。
 コンパニオンアンドロイドだ。
 人件費削減のため、最近の展示会では人間のコンパニオンに代わってアンドロイドが導入されることが増えた。特にこの展示会に派遣されているのは、格安で有名な派遣会社のアンドロイドたちだ。噂によれば、それらはすべて中古のセクサロイドを回収し、外装だけ綺麗にしてプログラムを書き換えた代物だという。
「……すげえ体だな」
 俺はある小さなブースの前で足を止めた。そこには一体のアンドロイドが、直立不動の姿勢で電源オフのまま立っていた。
 プラチナブロンドの髪に、派手なメイク。そして何より目を引くのは、エナメルのボディスーツに包まれた豊満な肉体だ。胸元の布地は限界まで引き伸ばされ、今にもはち切れんばかりに膨れ上がっている。腰のくびれは極端に細く、そこから伸びる脚は肉感的だ。
 元セクサロイドというのも頷ける。男の欲望を具現化したようなプロポーションだ。
 周囲を見渡す。誰もいない。このエリアはメインの通路から外れており、他のバイトや警備員が来る気配はなかった。
 俺の中に、ある衝動が芽生えた。
 こいつらは今、ただの展示物だ。だが、元は男を慰めるために作られた存在だ。
 俺はアンドロイドの背後に回り込み、うなじの下にある小さなスイッチを探り当てた。カチリ、と小さな音が鳴る。
 一瞬の間をおいて、アンドロイドの全身が微かに震えた。ウィィン、という駆動音が静寂に響く。
「いらっしゃいませ」
 アンドロイドが顔を上げ、完璧な営業スマイルを俺に向けた。
「株式会社サイバー・ソリューションズへようこそ。当社の最新クラウドサービスをご紹介いたします」
 滑らかな、しかし抑揚の乏しい合成音声。彼女は俺を「来場者」として認識したようだ。
「……へえ、よくできてるな」
 俺は彼女の正面に回り込んだ。彼女の青い瞳は俺を捉えているが、そこに感情の色はない。
「こちらのパンフレットをご覧ください」
 彼女は何も持っていない手を差し出し、空中の見えないパンフレットを渡す仕草をした。本来なら手に持たされているはずのビラが、まだ準備されていないのだ。
 俺はその手を無視して、彼女の胸に手を伸ばした。
 エナメル越しに伝わる感触は、柔らかく、弾力があった。
「お客様、QRコードのご提示をお願いいたします」
 彼女は俺のセクハラを完全に無視した。プログラムにない行動には反応しないよう設定されているのだろう。
「QRコード? 持ってないよ」
 俺は言いながら、彼女の胸を強く揉みしだいた。グニリと形を変える巨大な乳房。彼女は表情一つ変えず、同じ言葉を繰り返す。
「お客様、QRコードのご提示をお願いいたします。当社のサービス詳細を送信させていただきます」
「無視かよ。元セクサロイドのくせに」
 俺は大胆になった。彼女の腰に手を回し、引き寄せる。冷たい体が俺の体に密着する。
 彼女のプログラムは、あくまで「展示会のコンパニオン」として振る舞うことだけ。性的機能は削除されているという話だ。だが、体はどうだ?
 俺は彼女の極端に短いスカートの中に手を滑り込ませた。
「……!」
 指先に触れたのは、薄い布の感触と、その奥にある柔らかいスリット。
 ある。ちゃんと残っている。
 俺は興奮を抑えきれず、ズボンのベルトを解いた。
「お客様、QRコードが確認できません。恐れ入りますが、パスをスキャナにかざしてください」
 彼女は事務的な口調で言い続ける。俺が彼女のボディスーツの股部分を強引に横にずらしても、彼女は抵抗しなかった。
「うるさいな。スキャンしてやるよ、俺のこれを」
 俺は自身の硬直した肉体を、彼女の秘部に押し当てた。
 濡れてはいなかった。だが、シリコンの粘膜は驚くほど滑らかで、俺の侵入を拒まなかった。
「……っ、くぅ……」
 きつい。だが、温かみがないことを除けば、それは生身の女と変わらない、いや、それ以上の名器だった。
「当社のクラウドサービスは、業界最高水準のセキュリティと――」
 俺が腰を打ち付けるたびに、彼女の体が揺れる。だが、彼女の口から紡がれるのは、無機質な宣伝文句だけだ。
「あぁ、いいぞ、その調子だ……」
 俺は彼女の腰を掴み、激しくピストン運動を繰り返した。エナメルの衣装が擦れる音と、肉がぶつかる音が響く。
「コスト削減と業務効率化を同時に実現し――」
 彼女の視線は俺の顔ではなく、俺の胸元にあるはずのQRコードを探して彷徨っている。その虚ろな瞳と、快楽を貪る俺の行為のギャップが、さらに俺を興奮させた。
 彼女はただの機械だ。何をしても文句を言わない。感じもしない。
 だが、その体が俺を受け入れ、吸い付いてくる。
「お客様、スキャンを開始します……スキャン……スキャン……」
 俺の激しい動きに合わせて、彼女の音声が少し乱れたような気がした。
「いくっ、中に出すぞ……!」
 俺は最期の衝動に身を任せ、彼女の最奥に熱いものを吐き出した。
「……スキャン完了。情報を取得しました」
 俺が果てた瞬間、彼女はそう告げた。
 俺は荒い息を吐きながら、彼女から離れた。彼女の股間からは、俺の出したものが白く垂れている。
 彼女は乱れた衣装もそのままに、再び直立不動の姿勢に戻り、ニッコリと微笑んだ。
「ご登録ありがとうございます。今後とも弊社製品をよろしくお願いいたします」
 俺は急いでズボンを整え、彼女の衣装を元に戻した。
 そして、背中のスイッチを切る。
 ウィィン……という音と共に、彼女は再びただの人形に戻った。
 俺は誰にも見られていないことを確認し、逃げるようにその場を後にした。
 翌日の展示会で、彼女が何食わぬ顔で客にビラを配る姿を想像すると、俺は奇妙な背徳感と優越感に包まれた。