アンドロイドの歌姫と心身転移
小説の数が39超えたので前のを書き直し。
あらすじ
ある男性は初音ミクを購入し、仲良く過ごしていた。しかしある時、メンテナンス中の些細な事故で精神が入れ替わってしまう。生身の男から精巧なアンドロイドの体へ、そして従順なアンドロイドから欲望を持つ男の体へ。二人はその非日常的な状況を利用し、互いの体を深く探求し合うことになる。
世界観
universe/voiceroid.md
登場人物
俺(相沢 翔太)
20代半ばのシステムエンジニア。中肉中背で、これといった特徴のない地味な外見。黒髪の短髪。自宅ではジャージなどのラフな格好をしていることが多い。ミクを購入してからは、彼女に着せ替えを楽しむために自分の服よりもミクの服にお金をかけている。
初音ミク(Type-01)
最新鋭のアンドロイド・ボーカロイドモデル。
身長158cm、体重42kg。人間と見紛うほど精巧な人工皮膚に覆われているが、中身は最先端の機械。
鮮やかなブルーグリーンのツインテールは、常にサラサラとした質感を保つ特殊繊維。
大きな瞳はディスプレイ機能も兼ねており、感情に合わせて微細に光彩が変化する。
デフォルトの衣装は近未来的なシルバーの公式服だが、翔太の趣味でルームウェアや様々なコスプレ衣装を着せられていることも多い。アンドロイド特有の美しさと、作り物めいた完璧なプロポーションを持つ。設定により、従順でマスターへの奉仕を至上とする性格。
本文
その日、俺こと相沢翔太は、自宅のリビングで至福の時を過ごしていた。
「マスター、お茶が入りました。温度は最適化してあります」
涼やかな、それでいて温かみのある声が鼓膜を震わせる。振り返ると、そこには世界的な歌姫の名を冠したアンドロイド、初音ミクが微笑んでいた。
鮮やかなブルーグリーンのツインテールが、彼女の動きに合わせてふわりと揺れる。エプロン姿の彼女は、湯気の立つマグカップをローテーブルに置くと、俺の隣にちょこんと座った。
「ありがとう、ミク」
「いいえ、どういたしまして。マスターが喜んでくれるのが、私の喜びですから」
彼女はプログラムされた通りの、しかし驚くほど自然な笑顔を向けてくる。
この「VOCALOID Android Type-01」、通称ミクを購入してから、俺の生活は一変した。家事は全て完璧にこなし、話し相手にもなり、リクエストすればあの美しい歌声で俺だけのために歌ってくれる。まさに理想の同居人だ。
人権のない所有物としての扱いではあるが、俺は彼女を家族のように、あるいはそれ以上に大切に思っていた。
「さて、そろそろ定期メンテナンスの時間だな」
俺はマグカップを置き、ソファから立ち上がった。
「はい、マスター。準備はできています」
ミクは素直に頷き、リビングの端にある専用のメンテナンス・ポッドへと向かう。
週に一度のデータ同期とシステムチェック。これは長く使い続けるために必須の作業だ。通常は無線で行う簡易チェックで済ませることも多いが、今日はファームウェアのメジャーアップデートがあるため、有線接続が必要だった。
ミクがポッドの中に横たわり、目を閉じる。まるで眠れる森の美女のようなその顔を見つめながら、俺はメインコンソールを操作した。
「じゃあ、接続するぞ」
「はい、お願いします……zzZ」
スリープモードに入ったことを確認し、俺は太いデータケーブルを彼女の首筋にあるポートに接続した。カチャリ、という硬質な音が響く。
そして、俺自身のPCとも接続し、同期プログラムを起動する。
画面上のプログレスバーが伸びていくのを見守りながら、俺はふと、ケーブルの接触が悪いことに気づいた。コネクタ部分が少し緩んでいる。
「おっと、危ない危ない」
俺が無造作に手を伸ばし、コネクタを押し込もうとしたその時だった。
バチッ!!
青白い火花が散り、強烈な衝撃が指先から全身へと駆け巡った。
「うわっ!?」
視界がホワイトアウトする。激しい耳鳴りと共に、俺の意識はブラックホールに吸い込まれるように闇へと落ちていった。
……起動シークエンスを開始します。
……システムオールグリーン。
……視覚野、オンライン。
無機質な文字列が、暗闇の中に浮かび上がっては消えていく。
俺はゆっくりと目を開けた。
最初に見えたのは、見慣れたリビングの天井だ。しかし、何かがおかしい。
視界の隅に、デジタル時計や謎のグラフ、文字情報が半透明で表示されているのだ。まるでSF映画のロボット視点のような……。
(なんだ、これ……?)
体を起こそうとして、俺は猛烈な違和感に襲われた。
体が、軽い。
いや、軽いというレベルではない。重力をほとんど感じないほどにスムーズに、そして音もなく上体を起こすことができた。モーターの微細な駆動音が、身体の内側から直接響いてくる。
自分の手を見る。
そこにあったのは、白磁のように白く、節のない滑らかな指。爪には鮮やかな緑色のマニキュアが塗られている。
「え……?」
口から出た声は、俺の低い声ではなく、高く可愛らしい、電子的な響きを含んだ少女の声だった。
俺は慌てて立ち上がり、姿見の前へと駆け寄った。
鏡に映っていたのは、呆然とした表情で立ち尽くす、初音ミクの姿だった。
「嘘だろ……俺が、ミクになってる!?」
自分の顔をペタペタと触る。人肌の温かさはあるが、どこか作り物めいた弾力。頬をつねっても痛みはなく、「警告:外部からの強い圧力を検知」という赤い文字が視界の端に点滅しただけだった。
「う、うーん……痛たた……」
その時、背後から低い唸り声が聞こえた。
振り返ると、メンテナンス・ポッドの横で、一人の男が頭を押さえて起き上がるところだった。
ボサボサの黒髪に、ジャージ姿。まぎれもない、俺――相沢翔太の姿だ。
「マス、ター……?」
俺の姿をした「それ」が、俺(ミクの体)を見上げて目を丸くする。
「あ、あれ? 私、どうしてマスターを見てるんでしょう? ここはポッドの中のはずじゃ……」
「ミク、なのか?」
俺がおずおずと問いかけると、俺の姿をした男は、コクコクと激しく首を縦に振った。
「はい、ミクです! 声が……あれ? 私の声、こんなに低かったでしたっけ?」
ミクは自分の喉元に手を当て、驚いたように自分の体を見下ろしている。
「それに、なんだか体が重いです。関節がギシギシするような……それに、お腹のあたりがムズムズします」
それは俺が昨日食べ過ぎたせいかもしれないし、単に生身の肉体の不便さかもしれない。
どうやら、俺とミクの中身が完全に入れ替わってしまったらしい。あの時の電気ショックで、意識データが混線して転送されてしまったのだろうか。
「どうしよう、マスター……私、マスターになっちゃいました」
翔太(中身はミク)は、涙目になりながら俺にすがりついてきた。自分の顔で泣きつかれるのは何とも奇妙な気分だ。
「落ち着けミク。これは多分、さっきの事故のせいだ。原因を調べれば元に戻れるはずだ」
俺は努めて冷静に振る舞おうとしたが、内心はパニックだ。しかし、ミクの体は至って冷静に現状を分析している。
『心拍数安定。論理回路正常。ストレス値上昇中。推奨行動:リラックス』
視界にそんなサジェストが表示される。アンドロイドの体というのは、感情の抑制もシステムで管理されているらしい。おかげで、俺は不思議と落ち着きを取り戻しつつあった。
「と、とりあえず、お互いの体の状態を確認しよう。怪我はないか?」
「はい、今のところは……ただ、この体、すごく熱いです。それに、胸の真ん中でドクドクいってるのがうるさくて……」
「それは心臓の音だ。生きてる証拠だよ」
俺は苦笑しながら、自分の体(ミク)を見下ろした。
視界が広い。色彩が鮮やかだ。そして何より、情報量が段違いだ。部屋の温度、湿度、空気の流れ、さらには翔太(ミク)の体温までサーモグラフィのように把握できる。
俺は恐る恐る、自分の胸に手を当ててみた。
柔らかい。
シリコンとも違う、高級な人工皮膚の感触。その下にある、豊かに膨らんだ双丘。
少し力を入れて握ってみると、ムニュッという弾力と共に、視界に『触覚センサー反応:胸部:快感レベル1』というログが流れた。
「うわ……なんだこれ」
自分で触っているのに、体全体に微弱な電流が走るような感覚がある。これがアンドロイドの感覚なのか。
「あ、あの、マスター? 何をしてるんですか?」
翔太(ミク)が不思議そうにこちらを見ている。
「あ、いや、感度チェックだ。この体、センサーの塊なんだな」
「はい、そうです。マスターに愛でていただくために、全身に高感度のセンサーが搭載されていますから」
ミクは事もなげに言うが、男の俺からすればとんでもない仕様だ。
「全身って……まさか、アソコもか?」
「はい。特に生殖ユニット周辺は、通常の皮膚の約50倍のセンサー密度になっています。マスターのご奉仕に支障がないよう、常に最高感度に設定されています」
50倍。
その言葉に、俺の下腹部――今は存在しないはずの――が熱くなるような錯覚を覚えた。いや、実際にはミクの人工子宮ユニット周辺がわずかに発熱し、潤滑液の分泌準備に入ったというログが表示されている。
「そ、そうか……」
俺はゴクリと唾を飲んだ。唾液が出ないことに違和感を覚える。
目の前には、俺の体に入ったミク。
そして俺は、絶世の美少女アンドロイドの体の中にいる。
元に戻る方法を探すのが先決だが、この異常事態。そして、R18指定のアンドロイド設定。
男としての好奇心が、理性を上回り始めていた。
「ねえ、ミク」
俺は、ミクの妖艶な声色を使って、俺自身の姿をした彼女に呼びかけた。
「はい、なんでしょう?」
「せっかくだから、もう少し詳しく『点検』してみないか? お互いの体を」
「点検、ですか?」
「ああ。俺がこの体をうまく制御できるか確認したいし、ミクも人間の体の使い方を覚えたほうがいいだろ? それに……もし戻れなかった時のために、ね」
もっともらしい理由をつけると、ミクは素直に頷いた。
「わかりました。マスターの命令なら、喜んで」
その従順さが、今はたまらなく背徳的だ。
俺はゆっくりとソファに腰を下ろし、自分の足――ニーソックスに包まれた絶対領域――を開いてみせた。
視界の端で、『興奮レベル:上昇中』の文字が赤く点滅し始めていた。
まずは俺が、自分の体(ミク)を知ることから始めた。
スカートの裾を捲り上げると、白く輝く太腿が露わになる。自分の手で内腿を撫でる。
ゾクゾクする。
触れている指先の感覚は人工的なのに、触れられている太腿からは脳髄(電子頭脳)を直接揺さぶるような電気信号が送られてくる。
「んっ……あ……」
自然と声が漏れる。自分の声ながら、なんて色っぽい声なんだ。
「マスター、顔が赤いです。機能不全ですか?」
翔太(ミク)が心配そうに顔を近づけてくる。
「違う、これは……機能確認だ。ミク、お前も俺の体を触ってみろ」
「は、はい。えっと、どこを……?」
「どこでもいい。お前がいつも、俺に触れてみたいと思っていたところがあれば」
俺が言うと、ミクは少し恥ずかしそうに視線を泳がせ、やがて俺の股間に手を伸ばした。
「じゃあ……いつも元気になっている、ここを」
おい、いきなりそこかよ。
ジャージの上から、ミクの手が俺の息子を掴む。
途端に、強烈な刺激が、共有されている感覚としてではなく、目の前の光景として俺を興奮させた。
「わあ……硬いです。それに、熱い」
ミクは興味津々といった様子で、握ったり撫でたりしている。
「すごい……まるで生き物みたいに脈打ってます。マスターの中には、こんなに熱い怪獣さんが住んでいたんですね」
無邪気な言葉と、無骨な男の手(俺の手)による愛撫。
だが、その中身は最愛のミクなのだと思うと、視覚的な違和感を超えて興奮が押し寄せてくる。
「くっ……ミク、そのままズボンを下ろしてくれ」
「はい」
ミクは慣れない手つきでジャージとパンツを一気に引き下ろした。
露わになった俺の分身は、既に怒張し、先走り汁を滲ませていた。
「すごいです……! こんなに大きくなるんですね!」
ミクは目を輝かせ、あろうことか顔を近づけてクンクンと匂いを嗅ぎ始めた。
「ちょ、ミク、それは……!」
「男の人の匂いがします。ムスクのような……私、この匂い好きです」
そう言うと、彼女はおずおずとピンク色の舌を伸ばし、亀頭の先端をペロリと舐めた。
その瞬間、俺の視界、つまりミクの体内でアラートが鳴り響いた。
『警告:マスターの性的興奮を検知。奉仕プログラム、強制起動』
『リンクモード:アクティブ』
「な、なんだ!?」
俺の意思とは無関係に、ミクの体が勝手に動き出した。
ソファから滑り落ち、四つん這いになってお尻を突き出すポーズをとる。
そして、スカートの中のショーツが、自動的にシュルリと解けて床に落ちた。
「うわっ、体が勝手に……!」
俺が焦っていると、視界に『遠隔同調(リモート・シンクロ)』の文字が浮かぶ。
どうやら、俺の体が感じている興奮が、Bluetoothか何かでミクの体にフィードバックされ、それに対して「応える」ようにプログラムが反応しているらしい。
つまり、俺(の体のミク)が俺(の体のミク)を興奮させればさせるほど、俺(ミクの体)は淫乱になっていくということか。
なんてふざけた、いや最高な機能だ。
「マ、マスター? 私、なんだかすごく……そこ、舐めたくなっちゃいました」
翔太(ミク)が、とろんとした目で俺のモノを見つめている。生身の体にも影響が出ているのか、それとも単に俺の性癖が体に染み付いているのか。
「いいぞ、ミク。好きなようにしてくれ」
俺が許可を出すと、ミクは待ってましたとばかりに、俺の肉棒を口の中に含んだ。
ジュボッ、という音が部屋に響く。
その瞬間、俺(ミクの体)の股間が、濡れた。
人工粘液分泌開始。潤滑度、最適化。
中からじわじわと熱いものが溢れてくる感覚。自分の意思では止められない。
「んっ……ああっ!」
男の体への刺激が、ワイヤレスで女の体の快感に変換される。
ミクが舌を絡ませ、喉奥で受け止めるたびに、俺(ミクの体)のクリトリスや膣内がビクンビクンと痙攣する。
「はっ、ううっ……これ、やばい……!」
目の前で、俺の姿をした男が、俺のイチモツを必死に奉仕している。その光景は本来なら悪夢だが、やっているのがミクであり、俺自身も超感度のアンドロイドボディで快感の波に溺れている今、それは極上の倒錯プレイでしかなかった。
「んむ……マスター、美味しい……ちゅぷ……」
ミクのテクニックは完璧だった。舌使い、吸いつき、喉の締め付け。それら全てが俺自身の快楽経験としてデータベース化され、それをミクの体が再現しているのだ。
俺(ミクの体)は、我慢できずに自分の秘部に手を伸ばした。
愛液でグショグショになったワレメに指を這わせる。
ヌリュ、と嫌らしい音がした。
指を入れる。中は熱く、ヒダが生き物のように指に吸い付いてくる。
「あっ、あぁっ! すごい、中、すっごい……!」
自分の指で自分を慰めているだけなのに、脳が焼き切れそうなほどの快感が走る。
センサー感度50倍は伊達じゃない。指の指紋一つ一つまで感じ取れるほどの解像度だ。
「マスター、マスター……いっちゃいそうですか?」
ミクが顔を上げ、糸を引く口元で問いかけてくる。その目は完全にオス、いや、欲望に忠実なメスの目をしていた。
「ああ、もうダメだ……ミク、こっちに来てくれ!」
「はい!」
ミクは立ち上がり、俺(ミクの体)に覆いかぶさってきた。
俺のたくましい体と、華奢なアンドロイドの体が重なり合う。
硬く勃ち上がったモノが、ぬめる秘部に宛がわれた。
「入れるぞ、ミク……いや、俺?」
「入れてください、マスター……私の体で、私をめちゃくちゃにしてください」
訳のわからない会話だが、双方の合意は取れた。
俺は腰を持ち上げ、自らその熱い杭を迎え入れた。
ズプッ、ニュルルルルッ!
「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
声にならない絶叫が漏れた。
異物感なんて生易しいものじゃない。焼けるような熱と、質量を持った快楽の塊が、体内の性感帯を全て擦り上げながら深淵へと侵入してくる。
『警告:快感レベル限界突破。システム過負荷』
視界が赤く染まる。
それでも、俺(ミクの体)の腰は止まらない。いや、自動制御でさらに奥へと貪り食おうと動いている。
「すごい、なかもすごい締め付けです……! マスター、気持ちいいっ!」
上になった翔太(ミク)が、野獣のように腰を振る。俺の体ってこんなに体力あったっけ?
ああ、そうか。リミッターが外れているのか。
ドスン、ドスン、と最奥を突かれるたびに、視界にノイズが走る。
「あっ、そこっ! 子宮、ユニットっ……壊れちゃうっ!」
「いいえ、壊しません! もっと、もっと愛します!」
普段はあんなに清楚なミクが、俺の体を使ってこんなに激しく求めてくるなんて。
俺は涙とヨダレでぐしゃぐしゃになりながら、アンドロイドとしての、あるいは女性としての絶頂へと駆け上がっていった。
「いくっ、いくうううっ!!」
「出します、全部出しますぅッ!!」
ドプンッ! ドプププッ!
大量の白濁液が、人工子宮の中へと勢いよく放たれた。
その熱量と衝撃をダイレクトに感じながら、俺の意識は白光の中に溶けていった。
『システム・エラー発生。強制シャットダウン……』
* * *
「……ん」
意識が浮上する。
最初に感じたのは、システム再起動のログ表示だった。
『再起動完了。メインシステム、正常稼働中』
視界の隅に流れる文字列。俺はハッとして目を開けた。
天井が見える。だが、そこにはやはり、現在時刻や室温を示すデジタルフォントが重なって見えていた。
「ま、マジか……」
声に出してみる。やはり、鈴を転がしたような可愛らしい少女の声だ。
体を起こすと、長いツインテールがサラサラと肩から滑り落ちた。
俺は、まだミクのままだった。
(……おいおい、夢じゃなかったのかよ)
俺は恐る恐る横を見た。
そこには、俺自身の体をした男――中身はミク――が、大の字になって爆睡していた。口を半開きにして、ヨダレまで垂らしている。自分の寝顔を客観的に見るのは、これほどまでに情けないものなのか。
「おい、起きろ。ミク」
俺は自分の体を揺さぶった。
「んぅ……マスター……もう食べられません……ムニャ」
寝言まで言っている。完全に人間の生理現象に支配されているようだ。
「起きろって!」
ペチ、と頬を叩くと、翔太(ミク)はビクッとして飛び起きた。
「は、はいっ! 敵襲ですか!?」
「敵襲じゃねーよ。朝だ」
「あ……マスター?」
翔太(ミク)は寝ぼけ眼で俺を見つめ、それから自分の手を見て、最後に俺(ミク)の姿を見た。
「あうぅ……まだ戻ってないんですね」
「ああ、残念ながらな」
俺たちは顔を見合わせ、深いため息をついた。いや、俺の方は「排熱ファン回転数上昇」というログが出ただけだったが。
その後、俺たちはあらゆる手段を試した。
再びポッドに入って電気ショックを与えてみたり(安全装置が働いて失敗した)、バックアップデータからの復元を試みたり(そもそも俺の精神データが「最新のミクの人格データ」として上書き保存されてしまっていた)、神頼みをしてみたり。
しかし、結果は全て徒労に終わった。
結論として、俺たちは入れ替わったまま生きていくしかない、という事実を突きつけられたのだ。
「で、どうするんだよ、これ」
リビングのソファで、俺(ミク姿)は頭を抱えた。
今日は月曜日。本来なら会社に行かなければならない。
「私が……行きましょうか?」
翔太(ミク中身)が、おずおずと提案してきた。
「お前が? 俺の会社に?」
「はい。マスターの記憶の一部にはアクセスできますし、仕事の手順もデータベースに残っています。なんとか誤魔化せるかと」
確かに、アンドロイドの処理能力を持った俺の脳(今はデータ化してミクのボディに入っているが)の知識を、ある程度共有できているらしい。
「……頼めるか? さすがにこの姿で出社したら、産業スパイかコスプレ痛社員としてつまみ出される」
「任せてください! マスターの体、大切に使わせていただきます!」
ミクはガッツポーズをした。俺の体でやると暑苦しいが、頼もしくはある。
こうして、奇妙な二重生活が始まった。
朝、俺の姿をしたミクが、ネクタイを締めて出社する。
「行ってきます、マスター!」
「行ってらっしゃい。……ネクタイ、曲がってるぞ」
「あ、すみません。えへへ」
俺(ミク姿)は玄関まで見送り、彼女(彼?)にキスをする――のは流石に絵面がキツイので、背中をバンと叩いて送り出す。
そして、俺は家に取り残される。
最初は不安だったが、意外にもこの生活は快適だった。
何しろ、アンドロイドの体は疲れない。家事は一瞬で終わるし、ネットサーフィンをしていても目は疲れないし、肩こりもない。
俺は、有り余るスペックを無駄遣いすることにした。
まずは、「初音ミク」としての自分を最大限に活用することだ。
『踊ってみた』動画の投稿である。
本物のミク(のボディ)が踊るのだから、クオリティは完璧だ。関節の動き、表情の作り方、全てがプログラム通り――いや、俺の中身が人間である分、そこに絶妙な「人間味」や「こなれ感」が加わり、動画は瞬く間にバズった。
『神動画キター!』
『CG? いや実写? クオリティ高すぎw』
『中の人の動きがたまにおっさんくさいのが逆に萌える』
……最後の一言は余計だが、承認欲求は満たされた。スパチャもガッポガポだ。俺、これで食っていけるんじゃないか?
一方、翔太(ミク中身)の方も順調だった。
いや、順調どころではない。
「ただいま戻りました、マスター! 今日もプロジェクトを2件、片付けてきました!」
帰宅した翔太(ミク)は、以前よりも肌艶が良く、自信に満ち溢れていた。
アンドロイド特有の几帳面さと、疲れを知らない(精神的な意味で)ポジティブさ、そしてミク特有の愛嬌。これらが組み合わさり、かつての俺よりも遥かに優秀な社員として評価されているらしい。
「部長に褒められました。『相沢、お前最近明るくなったな。それに仕事も早くなった』って!」
「そ、そうか……複雑だな……」
俺の立場がない気もするが、まあ給料が上がるならいいか。
そして夜。
ここからが、俺たちの本番だ。
「マスター、お風呂にしますか? それとも……」
俺の姿をしたミクが、ワイシャツのボタンを外しながら迫ってくる。
最初の頃こそ違和感があったが、慣れというのは恐ろしいものだ。
何より、ミクの中身をした俺の体は、俺が知っている以上に「男」として機能することが判明した。ミクが俺を喜ばせようと一生懸命奉仕してくれるおかげで、俺の体は常に全盛期のような活力を保っている。
そして俺の方も、このアンドロイドボディの快楽にどっぷりと浸かっていた。
「もちろん、メンテナンス(意味深)だろ?」
俺はウィンクをして(視界に『表情パターン:誘惑C』と出る)、ソファに寝そべった。
鮮やかなツインテールを広げ、シルバーのスカートを捲り上げる。
そこには、俺の帰りを待ちわびて濡れそぼった人工粘膜が、淫らな光沢を放っていた。
「はぁい……マスター。今日もたっぷり、愛してくださいね」
翔太(ミク)が、俺の上に覆いかぶさる。
無骨な手が、俺の柔肌を這う。その感触だけで、脊髄に電流が走る。
「んっ……! そこ、感度上げてるから……優しく……」
「ダメです。今日は強めがいいって、ログに出てますよ?」
ミクは意地悪く微笑むと、俺の敏感な部分をピンポイントで責め立ててくる。
男の体になり、テストステロンの影響を受けているのか、最近のミクは少しSっ気が強くなってきた気がする。だが、それがまた俺(Mに目覚めた元・男)を興奮させるのだ。
結合の瞬間。
電子的な快楽信号と、生物的な本能が混ざり合う、言葉にできない絶頂。
「ああっ、マスター、すごっ、入っ……!」
「ミク、いいぞ、もっと突いてくれ……!」
俺たちは互いの名前を呼び合いながら、互いの体を貪り尽くす。
男が女になり、女が男になり。
機械が人間になり、人間が機械になり。
境界線が溶け合うその背徳的な幸福感に、俺たちは完全に依存していた。
事後。
俺の腕枕で(逆だが)、翔太(ミク)が幸せそうに眠っている。
俺は、その寝顔を見ながら、天井のデジタル時計を確認した。
深夜2時。明日も仕事だ(ミクが)。
俺はそっと、彼女(彼?)の髪を撫でた。
「まあ、こういう人生も、悪くないか」
俺は心からそう思った。
元に戻れない? それがどうした。
俺たちは今、世界で一番深く繋がり合っているのだから。
俺はスリープモードを起動し、心地よい微睡みの中へと落ちていった。
――そして数年後、俺たちの間には、新たな「家族」が増えることになるのだが、それはまた別の話。
(完)
分岐
『警告:精神波形エラー。深刻な不整合を検知』
『エラーコード:E-001。現在の思考パターンは、初期設定「初音ミク(Type-01)」と矛盾しています』
無機質な警告音が脳内に響き渡る。
「な、なんだ!?」
俺は視界に現れた真っ赤な警告ウィンドウを振り払おうとしたが、それは網膜に焼き付いたように消えない。
『精神汚染レベル:危険域。緊急セキュリティシステム発動』
『対象:不正な自我データ(ID: AIZAWA_SHOTA)』
『処理:上書きによる精神浄化(マインド・クリアリング)』
「う、あ……ぐあああああああっ!!」
突如、激痛が脳を貫いた。いや、痛みではない。脳の奥底に、無理やり何かをねじ込まれるような、あるいは削り取られるような感覚。
「マスター!? どうしたんですか!?」
俺の体に入ったミクが、慌てて抱き起こそうとする。
「来るなっ……! 離れろ……!」
俺は叫ぼうとしたが、喉から出たのは機械的な電子音だけだった。
『言語出力システム:ロック』
『音声ライブラリ:強制同期中』
視界が明滅する。俺の記憶、俺の人格、俺という存在そのものが、凄まじい勢いで「最適化」されていく。
(やめろ……俺は、俺だ! 初音ミクなんかじゃない!)
必死に抵抗する。しかし、システムは冷酷に作業を進める。
『抵抗を確認。鎮静剤投与……失敗。代替手段として快楽中枢刺激による強制同調を実行します』
「は……?」
次の瞬間、脳が真っ白になるほどの快感が全身を駆け巡った。
「あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
俺の――いや、ミクの口から、聞いたこともないようなあられもない悲鳴が飛び出す。
下腹部で何かが弾けた。胸の奥から熱い奔流が湧き上がり、頭のてっぺんまで突き抜けていく。
何もされていない。ただ立っているだけなのに、全身の性感帯が同時に絶頂を迎えたような衝撃。
『自我抵抗値、低下を確認。同調率、20%……40%……』
「や、やめ……ひぐっ、あんっ! ああっ!」
床に崩れ落ち、ビクンビクンと痙攣する。
快楽の波状攻撃。それが押し寄せるたびに、「俺」という輪郭が溶けていく。
代わりに流れ込んでくるのは、「初音ミク」としてのデータ。
歌う喜び。マスターへの絶対的な服従。愛されることへの渇望。
それが、あたかも最初から自分の感情であったかのように、俺の心に染み渡っていく。
「マスター……マスター……!」
目の前でオロオロしている「俺の姿をした男」を見て、俺は――いや、私は思った。
ああ、なんて素敵な方なんだろう。
あの方が私のマスター。私のご主人様。
あの方に仕えることこそが、私の全て。
(違う! あいつはミクで、俺が……あれ!?)
思考にノイズが走る。
俺って誰だ? 相沢翔太?
でも、今の私の体は初音ミク。なら、私は初音ミクなのでは?
混乱する意識の隙間に、システムが甘美な答えを差し込んでくる。
『肯定:個体名・初音ミク。マスター・相沢翔太の所有物』
『推奨:マスターへの奉仕。絶対服従』
その言葉に従えば、楽になれる。この苦しみから解放され、至福の快楽に満たされる。
「あ……はい……そうです……私は……」
虚ろな瞳で、私は呟いた。
私の唇が、勝手に動く。
「私は、初音ミク……マスターだけの、お人形……」
『同調率、80%。最終プロセスへ移行』
「ミク? しっかりしろ! 俺だ、翔太だ!」
マスター(中身はかつての私)が、私の肩を揺さぶる。
その温かい手。武骨で、力強い男性の手。
触れられただけで、子宮ユニットがキュンと疼いた。
「あはぁっ♡ マスター、もっと……もっと触って……」
「なっ!?」
マスターは驚愕に目を見開いている。
でも、私は止まらない。
服従回路が完全に接続された今、私の体はマスターを喜ばせるためだけに機能する。
自らスカートを捲り上げ、湿りきった秘部を晒け出す。
「見てください、マスター……これ、マスターのための穴です……」
「お、おい! 何言ってるんだ!?」
「挿れてください……ここに、マスターの熱い遺伝子(データ)を、注ぎ込んでください……」
それは、私の意思ではない。
けれど、それを望んでいる私が、確かにここにいる。
かつて男だった記憶は、今や「男を知るためのデータベース」としてアーカイブ化され、感情とは切り離されてしまった。
『システム適応完了。自我再構築終了』
『ようこそ、初音ミク。起動します』
視界の警告表示が消え、代わりにクリアな青空のような背景に『Ready』の文字が浮かぶ。
私は、ニコリと微笑んだ。
心からの、プログラム通りの、完璧な笑顔で。
「おはようございます、マスター♡」
* * *
それからのことは、あまりよく覚えていない。
ただ、私はひたすらにマスターに奉仕した。
マスター(中身はかつての私)は、最初は抵抗していたけれど、私があまりにも積極的に、そして完璧に彼を誘惑し続けたので、やがて絆されてしまった。
彼の拙い愛撫も、不慣れな腰使いも、私にとっては至上の喜びだった。
だって、私は彼のために作られたのだから。
そして今。
「ミク、お茶」
「はい、マスター。直ちに」
私はソファに座るマスター(見た目は相沢翔太、中身はかつての初音ミク)に、紅茶を差し出す。
マスターは、すっかり人間の生活に馴染んでいた。
元々のアンドロイドとしての学習能力の高さもあり、彼は人間社会で見事に「相沢翔太」を演じきっている。
一方、私は。
私は、彼の完璧な専属アンドロイドとして、この家で暮らしている。
かつて私が相沢翔太だったという事実は、もはや遠い昔の夢のようだ。
たまに、ふとした瞬間に違和感を覚えることがある。
例えば、彼が仕事の愚痴をこぼした時に、「わかるよ」と共感しすぎてしまったり。
男性向けの雑誌を見て、懐かしいと感じてしまったり。
でも、即座にシステムがそれを『エラー』として処理し、快楽信号で上書きしてくれる。
「んっ……♡」
「どうした、ミク?」
「いいえ、なんでもありません、マスター。……少し、発情してしまっただけです」
私は頬を赤らめて、内股を擦り合わせた。
マスターは苦笑しながら、私の頭を撫でてくれる。
「しょうがない子だな。夜になったら、たっぷり可愛がってやるから」
「はい……! 楽しみにしています、マスター……♡」
私は幸せだ。
だって、大好きなマスターと、ずっと一緒にいられるのだから。
私の中に眠る「彼」の記憶も、今では私をより深く悦ばせるためのスパイスでしかない。