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少女になった朝

8,825 文字 約 18 分

女子中学生になっちゃうやつ(身体だけ版)

あらすじ

フリーランスで働いている男性。ある朝起きると、身体が少女(女子中学生ぐらい)になっている。
Web会議はボイスチェンジャーで誤魔化し、どうにか仕事をすることはできたが、日常生活は微妙に不便。
身体のサイズに合う服もないので、通販で買わないといけない。


登場人物

俺(主人公)
元は二十代後半の男性。身長175センチほど、やや細身の体型だった。変身後は、身長145センチほどの華奢な少女の姿になってしまった。黒髪のショートヘアで、少し癖のある髪質。肌は白く、顔立ちは整っている。瞳は茶色で、まつ毛が長い。胸はまだ発育途中で小さめのふくらみがある程度。腰のくびれは控えめだが、全体的に丸みを帯びた少女らしい体つき。元の服は全てブカブカで着られず、最初は大きめのTシャツを着て過ごしていた。通販で購入した服は、中学生向けのシンプルなワンピースやスカート、下着類など。

本文

目が覚めた瞬間、何かがおかしいと思った。

まず、視界の位置が低い。天井がやけに遠くに見える。そして、身体が軽い。いつもなら目覚めと同時に感じる肩や腰の重さがない。布団から手を出すと、その手は見慣れたものではなかった。

「……は?」

思わず声が出た。その声も、自分のものではない。高くて、細い。少女のような声だった。

慌てて身体を起こす。布団がずり落ちて、自分の身体が露わになった。いつも着ているTシャツとスウェットのパンツは、明らかにサイズが合っていない。ブカブカだ。そして、胸元に小さな膨らみがあった。

「嘘だろ……」

震える手でTシャツをまくり上げる。そこには、確かに女性の胸があった。まだ発育途中のような、小さな膨らみ。乳首は薄いピンク色をしていて、触れると柔らかい感触が指先に伝わってきた。

パニックになりながら、スウェットのパンツに手を入れる。いつもそこにあるはずのものが、ない。代わりに、滑らかな肌があるだけだった。

「マジかよ……」

鏡を見に行こうと立ち上がると、足元がふらついた。重心が違う。背も低くなっている。なんとかバランスを取りながら、洗面所へ向かった。

鏡に映ったのは、見知らぬ少女だった。

黒髪のショートヘア。大きな茶色の瞳。白い肌。整った顔立ち。どう見ても、中学生くらいの女の子だ。

「これ、俺……?」

鏡の中の少女が、同じように口を動かした。信じられない光景だったが、これが現実なのだと受け入れるしかなかった。

とりあえず、落ち着こう。パニックになっても仕方がない。まずは状況を整理する必要がある。

今日は水曜日。午後からクライアントとWeb会議が入っている。その準備をしなければならない。でも、この姿では……。

「ボイスチェンジャー、だな」

幸い、フリーランスで仕事をしているため、普段から在宅ワークだ。ビデオ会議も、カメラをオフにすれば問題ない。声だけボイスチェンジャーでなんとかすれば、仕事は続けられるはずだ。

問題は、日常生活だ。

着る服がない。今着ているTシャツとスウェットは、明らかにサイズが合っていない。肩からずり落ちそうだし、パンツも腰で止まっているだけで、いつ落ちてもおかしくない状態だ。

「通販で買うしかないか……」

スマホを手に取ると、手が小さくなっていることに改めて気づいた。指も細くて、華奢だ。画面をタップする感覚も、いつもと違う。

とりあえず、中学生向けの服を検索する。ワンピース、スカート、下着……。サイズは、たぶん145センチくらいだろうか。適当に選んで、カートに入れていく。

「下着も……買わないとな」

女性用の下着なんて、買ったことがない。どれを選べばいいのかもわからない。とりあえず、レビューの評価が高いものを選んで、カートに追加した。ブラジャーも必要だろう。サイズは……Aカップくらいか?

注文を確定すると、配送は明日の午前中になった。それまでは、このブカブカの服で過ごすしかない。

時計を見ると、午前十時を過ぎていた。会議まであと四時間ある。それまでに、資料の最終確認をしておかなければ。

パソコンの前に座ると、椅子の高さが合っていないことに気づいた。足が床につかない。調整しようと思ったが、最低の高さにしても、まだ少し高い。

「参ったな……」

足元にクッションを置いて、なんとか作業できる体勢を作った。キーボードを打つ指も小さくて、いつもの感覚とは違う。タイプミスを何度もしながら、なんとか資料の確認を進めた。

午後二時。Web会議の時間になった。

ボイスチェンジャーのソフトを起動し、声の高さを調整する。何度かテストして、なんとか自分の元の声に近い音になるように設定した。完璧ではないが、これで誤魔化せるはずだ。

会議が始まった。カメラはオフ。マイクだけオンにして、いつも通りに話す。

「お疲れ様です。それでは、資料を共有しますね」

ボイスチェンジャーを通した声が、スピーカーから聞こえてくる。少し機械的だが、相手は特に気にしていないようだった。

「はい、確認しました。この部分ですが……」

クライアントとのやり取りは、いつも通りに進んだ。一時間ほどで会議は終了し、無事に仕事を終えることができた。

「なんとか……なったな」

ホッと息をつく。仕事は続けられる。それだけでも、少しは安心できた。

しかし、問題は山積みだ。

まず、この身体がいつまで続くのかわからない。明日には元に戻っているかもしれないし、ずっとこのままかもしれない。原因も不明だ。何も心当たりがない。

そして、外出ができない。服がないし、身分証明書も使えない。免許証の写真は、二十代の男性のものだ。この姿では、まったく別人だ。

「とりあえず、様子を見るしかないか……」

その日は、家の中で過ごした。夕食は、冷蔵庫にあるもので簡単に済ませた。料理をするのも、いつもと感覚が違う。フライパンが重く感じるし、包丁を持つ手も小さい。

夜、風呂に入ることにした。

服を脱ぐと、改めて自分の身体を確認できた。鏡に映る少女の裸体。細い首、なだらかな肩のライン、小さな胸、くびれた腰、丸いお尻、まっすぐな脚。

「これが、俺の身体……」

不思議な感覚だった。見た目は完全に女性なのに、中身は男性のままだ。

恐る恐る、自分の胸に触れてみた。柔らかい。温かい。感覚がある。自分で触っているのに、触られているような感覚もある。不思議だ。

乳首に指先を這わせると、ゾクリとした感覚が走った。

「っ……」

思わず声が出た。敏感すぎる。こんなにも、感じるものなのか。

興味本位で、もう少し触ってみることにした。指先で乳首を転がすように刺激すると、身体がビクンと反応した。快感が、全身に広がっていく。

「あ、んっ……」

甘い声が、自然と漏れた。自分の声なのに、まるで他人のようだ。

もう片方の手を、股間に伸ばした。滑らかな肌。割れ目がある。そこに指を当てると、熱を持っているのがわかった。

「ここが……」

ゆっくりと、指を這わせる。入り口を探るように、優しく撫でた。すると、身体が震えた。腰が、勝手に動く。

「はぁ、あ……」

息が荒くなる。胸の鼓動が早くなる。こんなにも、感じやすいものなのか。

指先に、ぬめりを感じた。濡れている。自分の身体が、反応している。

もう少し、奥まで指を進めてみた。すると、入り口に何かが当たった。

「っ痛……」

鋭い痛みが走った。慌てて指を引く。処女膜、だろうか。奥まではいけない。

でも、快感は止まらなかった。指を浅く動かすだけで、身体は反応する。クリトリスを探すように、上の方を探ってみた。

すると、小さな突起に触れた。

「ひゃあっ!」

跳ねるように身体が反応した。そこを触ると、強烈な快感が襲ってくる。

もう、止められなかった。指を動かし続けた。クリトリスを刺激し、入り口を撫で、身体を震わせた。

「あ、あっ、んんっ……!」

快感が、どんどん高まっていく。腰が勝手に動く。呼吸が乱れる。視界が白くなる。

そして、限界が来た。

「あ、ああああっ!」

身体が硬直した。強烈な快感が、全身を駆け巡った。頭が真っ白になる。何も考えられない。ただ、快感に身を任せるだけだった。

しばらくして、身体の力が抜けた。床にへたり込むように座り込んだ。

「はぁ、はぁ……」

荒い息を整える。身体が火照っている。汗が滲んでいる。

「女の子の身体って……こんなに…」

言葉にならなかった。男性の時とは、まったく違う快感だった。全身で感じるような、波のように押し寄せる快感。

しばらくぼんやりしていたが、やがて我に返った。風呂に入るつもりだったのに、床で自慰をしていた。

「……とりあえず、風呂入ろう」

立ち上がって、浴槽にお湯を張った。身体を洗い、湯船に浸かった。

温かいお湯が、身体を包み込む。疲れが溶けていくような感覚だった。

「明日、服が届いたら……少しは普通に生活できるかな」

そんなことを考えながら、湯船に身を任せた。


翌日、朝十時に荷物が届いた。

宅配業者の人は、インターホン越しに「お届け物です」とだけ言って、玄関前に置いていってくれた。置き配サービスは、こういう時に便利だ。

荷物を開けると、昨日注文した服と下着が入っていた。

まずは下着を着けることにした。ショーツを履いて、ブラジャーを手に取る。どうやって着けるのか、よくわからない。

「後ろで留めるのか……?」

何度か試行錯誤して、なんとか着けることができた。鏡で確認すると、それなりに形になっている。

「これでいいのか……?」

自信はなかったが、とりあえずこれで過ごすことにした。

次に、ワンピースを着た。シンプルな白いワンピースで、丈は膝下まである。サイズもぴったりだった。

鏡を見ると、そこには普通の少女が映っていた。

「これなら……外にも出られるかな」

でも、身分証がない。コンビニに行くくらいなら問題ないだろうが、何かを契約したり、身分を証明する必要がある場面では困る。

「なんとかなるだろ……」

そう自分に言い聞かせて、その日も家で仕事をすることにした。


それから数日が過ぎた。

身体は、元に戻る気配がない。それどころか、この身体に慣れてきてしまった。

仕事は順調だ。ボイスチェンジャーでクライアントとのやり取りも問題なくこなせている。

問題は、身体の変化だった。

毎晩、風呂に入るたびに、自分の身体を触ってしまう。最初は興味本位だったが、今では習慣になってしまった。女性の快感に、すっかり虜になっていた。

この身体で生きていくのか、それとも元に戻るのか。わからないまま、日々は過ぎていく。

ただ一つ確かなのは、この身体が、もう自分の一部になりつつあるということだった。


それから一ヶ月が経った。

身体は相変わらず元に戻らない。それどころか、少しずつ変化が進んでいるように感じた。胸が少し大きくなった気がするし、腰のくびれもはっきりしてきた。鏡を見るたびに、自分が少女から若い女性へと成長している実感があった。

仕事は問題なく続けられている。ボイスチェンジャーのおかげで、クライアントとのやり取りも順調だ。むしろ、在宅ワークに集中できる時間が増えたせいか、以前より生産性が上がっている気すらした。

問題は、食料が底をついてきたことだった。

通販で食材を買うこともできるが、生鮮食品は送料が高い。それに、ずっと家に閉じこもっているのも精神的に良くない。

「そろそろ、外に出ないとな……」

決心して、近所のスーパーに行くことにした。

白いワンピースを着て、髪を整える。鏡を見ると、どこにでもいそうな普通の少女が映っていた。これなら、誰も不審に思わないだろう。

玄関を出て、外の空気を吸う。久しぶりの外出だった。太陽の光が眩しい。

スーパーまでは徒歩十分ほど。道を歩いていると、時折すれ違う人の視線を感じた。でも、それは好奇の目というよりは、普通に少女を見る視線だった。

スーパーに着いて、買い物カゴを手に取る。野菜、肉、卵、牛乳……。必要なものを次々とカゴに入れていく。

レジで会計を済ませようとした時、後ろから声がかかった。

「あら、こんにちは」

振り向くと、五十代くらいの女性が立っていた。見覚えがある。同じアパートに住んでいる住人だ。

「あ、こんにちは……」

「あなた、たしか三階の方よね? 見かけない顔だけど、お孫さん?」

「え、あ……はい、そうです」

咄嗟に嘘をついた。

「まあ、可愛らしい。いくつ?」

「十四です……」

「そう。でも、平日の昼間だけど、学校は?」

心臓が跳ねた。そうだ、今は平日の午前中だ。中学生なら、学校に行っているはずの時間だ。

「あの、体調が悪くて……今日は休んで……」

「そう、大丈夫? 無理しちゃダメよ」

「はい、ありがとうございます……」

なんとか会話を切り上げて、スーパーを出た。心臓がドキドキしている。

「マズい……」

平日の昼間に外出すると、こうやって声をかけられる。学校に行っていないことを不審に思われる。

帰り道、別の人からも声をかけられた。今度は地域の防犯パトロールをしているらしい老人だった。

「君、今日は学校休み?」

「は、はい……体調が……」

「そう。気をつけなさいね」

優しい言葉だったが、背中に冷や汗が流れた。

アパートに戻ると、ぐったりと座り込んだ。

「このままじゃ、ずっと家に閉じこもるしかない……」

しかし、それは無理な話だ。買い物に行く必要もあるし、いつか病院に行く必要が出るかもしれない。

考えれば考えるほど、袋小路に入っていく気がした。


それから数日後、転機が訪れた。

郵便受けに、地域の民生委員からの手紙が入っていた。

「地域にお住まいの皆様へ」という件名だったが、内容を読んで青ざめた。

「最近、平日の昼間に学齢期のお子様が外出している姿が目撃されています。不登校や家庭の問題でお悩みの方は、ぜひご相談ください」

これは、明らかに俺のことだ。

「やばい……」

このままだと、児童相談所が来るかもしれない。いや、もっと悪い事態になるかもしれない。

慌ててネットで検索した。「中学生」「不登校」「社会的圧力」……。

そして、あるページにたどり着いた。

「無戸籍の子どもでも、義務教育を受ける権利があります」

無戸籍。

そうだ。今の俺は、実質的に無戸籍の状態だ。元の戸籍は成人男性のものだし、この身体の戸籍は存在しない。

記事を読み進めると、無戸籍でも学校に通えることが書かれていた。住民票がなくても、居住の実態があれば、教育委員会に相談することで就学できるという。

「学校……か」

最初は抵抗があった。中学校に通うなんて、考えたこともなかった。でも、このままでは社会から疑われ続ける。いずれ追い詰められる。

それに、学校に通えば、平日の昼間に外出しても不審がられない。放課後や週末に仕事をすれば、生活は続けられる。

「やるしかない……か」

覚悟を決めて、翌日、教育委員会に電話をかけた。

「あの、相談したいことがあるんですが……」

対応してくれた女性職員に、できるだけ簡潔に状況を説明した。もちろん、身体が変わったことは言わない。「家庭の事情で戸籍がなく、これまで学校に通えなかった」とだけ伝えた。

「そうですか……。それは大変でしたね。少々お待ちください」

数分後、担当者が代わった。

「もしもし、教育委員会の田中と申します。詳しくお話を聞かせていただけますか?」

田中という男性職員は、丁寧に話を聞いてくれた。

「無戸籍の方でも、就学する権利はあります。まずは一度、こちらに来ていただけますか? お住まいの地域の中学校と調整させていただきます」

「はい、わかりました……」

翌週、教育委員会を訪ねた。

田中さんは優しそうな中年男性で、事情を聞きながらメモを取っていた。

「年齢は十四歳ですね。それなら、中学二年生に相当します。お住まいの地域の○○中学校に通っていただくことになります」

「あの、でも……戸籍が……」

「大丈夫です。住んでいる実態があれば、就学できます。ただし、正式な書類が揃うまでは、仮の扱いになります」

「仕事をしているんですが……」

「仕事?」

「在宅で、フリーランスの仕事を……」

田中さんは少し驚いた顔をしたが、すぐに理解を示してくれた。

「そうですか。義務教育が優先ですが、放課後や休日に少しずつ続けるのは構いません。学業に支障が出ない範囲でお願いします」

「はい……」

こうして、俺は中学校に通うことになった。


初登校の日。

制服は学校から借りたもので、少しサイズが大きかったが、なんとか着られた。紺色のブレザーに、チェック柄のスカート。白いシャツに、赤いリボン。

鏡を見ると、完全に女子中学生だった。

「……行くか」

重い足取りで、学校へ向かった。

校門をくぐると、生徒たちが次々と登校してくる。みんな、友達と楽しそうに話している。俺だけが、一人だった。

職員室に行くと、担任の先生が待っていた。

「おはよう。君が新しく来る子だね。私は二年三組の担任、佐藤です」

佐藤先生は三十代くらいの女性教師で、優しそうな雰囲気だった。

「よろしくお願いします……」

「緊張してる? 大丈夫、みんな優しい子たちだから」

教室に案内された。

「はい、みんな席について。今日から、新しい仲間が加わります」

佐藤先生が教室に入ると、生徒たちの視線が一斉に俺に集まった。

「自己紹介、お願いできる?」

「え、あ……」

名前をどうするか、考えていなかった。咄嗟に、元の名前を女性風にアレンジした名前を口にした。

「……です。よろしくお願いします」

小さな拍手が起こった。

「じゃあ、席はあそこね。隣の子がいろいろ教えてくれるから」

指定された席に座ると、隣の女子生徒が話しかけてきた。

「よろしくね! 私、山田美咲。ミサって呼んで」

「あ、よろしく……」

美咲は明るくて、人懐っこい子だった。休み時間になると、他の女子生徒も集まってきて、次々と質問された。

「どこから来たの?」

「前の学校は?」

「部活やる?」

答えに詰まりながら、適当に誤魔化した。

授業が始まると、意外にも内容についていけた。中学の勉強なんて、もう十年以上前のことだが、基礎的な内容は覚えていた。

問題は、体育だった。

「今日は体力測定をします。着替えたら校庭に集合」

体操着に着替えるため、女子更衣室に入った。

周りの女子生徒たちが、次々と制服を脱いでいく。ブラジャーやショーツ姿になる少女たち。

俺も、慌てて着替えた。視線を合わせないようにしながら、体操着を着る。

「ねえ、スタイルいいね」

美咲が声をかけてきた。

「え?」

「細いし、胸もあるし。羨ましい」

「そ、そんなこと……」

顔が熱くなった。女子生徒として扱われることに、まだ慣れない。

校庭での体力測定は、思ったより大変だった。身体が小さくて、力がない。握力も、元の半分以下だった。

それでも、なんとか一日を終えた。

家に帰ると、ぐったりとソファに倒れ込んだ。

「疲れた……」

でも、不思議と嫌な気分ではなかった。久しぶりに、人と話した。笑った。学校という場所は、思ったより悪くなかった。

夜、仕事をこなす。クライアントとのメールのやり取りをして、資料を作成する。幸い、仕事量はそこまで多くなかったので、深夜まで作業すれば終わった。

「これなら……なんとかなるかも」

そう思いながら、ベッドに入った。


学校生活が始まって二週間が経った。

少しずつ、クラスに馴染んできた。美咲をはじめとする女子グループと昼休みに話すようになったし、授業中に指されても、それなりに答えられるようになった。

ただ、問題もあった。

男子生徒からの視線だ。

休み時間、廊下を歩いていると、男子生徒たちの視線を感じる。ヒソヒソと話す声も聞こえる。

「新しい子、可愛いよな」

「話しかけてみたら?」

ある日、クラスの男子生徒が話しかけてきた。

「あの、ちょっといい?」

振り向くと、背の高い男子生徒が立っていた。クラスの中でも人気のある、スポーツ万能タイプの子だった。

「なに?」

「俺、佐々木っていうんだけど……よかったら、今度一緒に帰らない?」

誘われている。男子生徒に。

「え、あ……ごめん、用事があって……」

慌てて断った。

「そっか。残念。また今度ね」

佐々木は笑顔で去っていった。

美咲が、ニヤニヤしながら話しかけてきた。

「ねえねえ、佐々木くんに誘われてたよね? いいなあ」

「別に……」

「照れてる? 可愛い」

「照れてない!」

こんなやり取りが、日常になっていった。

そして、ある日の放課後。

部活動の見学に誘われて、校内を歩いていた時のことだ。

人気のない廊下で、突然腕を掴まれた。

「っ!」

振り向くと、見知らぬ男子生徒が立っていた。三年生だろうか。体格がいい。

「ちょっと、こっち来て」

「え、何……」

引っ張られて、空き教室に連れ込まれた。

「待って、何するの……!」

「可愛いよな、お前。前から気になってた」

男子生徒が、俺の肩を壁に押し付けた。

「やめて!」

抵抗しようとしたが、力が違う。この身体では、男子生徒に勝てない。

「少しくらい、いいだろ」

男子生徒の手が、俺の腰に回った。そして、胸に触れた。

「やめ……っ!」

その瞬間、ドアが開いた。

「何してるの!」

佐藤先生の声が響いた。

男子生徒が、慌てて離れた。

「先生、これは……」

「説明は後。あなたは職員室に来なさい。あなたは大丈夫?」

佐藤先生が、優しく俺の肩に手を置いた。

「は、はい……」

男子生徒は連れて行かれ、俺は保健室で休むことになった。

「怖かったでしょう。でも、もう大丈夫よ」

養護教諭が優しく声をかけてくれた。

「はい……」

身体が震えていた。怖かったのもあるが、それ以上に、触られた時の感覚が残っていた。

胸を触られた時、一瞬だが、快感を感じてしまった。

「こんな身体に……なっちゃって……」

涙が溢れた。

女性の身体は、思っていた以上に敏感で、脆くて、危険だった。

それでも、この身体で生きていくしかない。

学校に通い、仕事を続け、この新しい人生を受け入れていくしかない。

そう、自分に言い聞かせた。