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女神の座を奪った日

5,125 文字 約 11 分

内容は「転生魔法完全に理解した」とおおよそ一緒。

あらすじ

ある男性が事故で謎の空間に飛ばされる。神を名乗る女性が現れ、1つ(チート)スキルを選ぶように言われる。
“魔法の内容を変更できる”スキルを選択した男性。そして異世界に飛ばされる直前、そのために発動した魔法の内容を理解する。
男性は異世界に飛ばす対象をその女性に変更する。そして女性から魂が抜き取られて異世界へ飛ぶと同時に、男性の魂が女性に吸い込まれる。


登場人物

田中健太(たなか けんた)
24歳の男性。黒髪短髪で、平凡な顔立ちをしている。身長は175cm程度で、やや痩せ型。普段はスーツ姿で働くサラリーマン。特に目立った特徴のない、どこにでもいそうな青年。ゲームやライトノベルが好きで、異世界転生ものの作品をよく読んでいた。ある日、帰宅途中に交通事故に遭い、謎の空間へと飛ばされる。

アルテミシア
女神を名乗る存在。見た目は20代前半の若い女性で、腰まで届く銀色の長髪が特徴的。瞳は深い紫色で、神秘的な輝きを放っている。身長は165cm程度で、スレンダーながらも女性らしい曲線を持つ体型。純白のローブのような衣装を纏い、裸足で浮遊している。肌は透き通るように白く、まるで磁器人形のような美しさを持つ。表情は常に余裕に満ちており、どこか高慢な雰囲気を漂わせている。

本文

 目を開けると、そこは真っ白な空間だった。

 田中健太は自分の状況を理解できずに呆然と立ち尽くしていた。確か、帰宅途中だったはずだ。信号が青になって横断歩道を渡ろうとした瞬間、猛スピードで突っ込んできたトラックが視界に入って——そこから先の記憶がない。

「お目覚めですか、異世界への転生者様」

 声が響いた。鈴を転がすような、美しい声だった。

 健太が振り返ると、そこには一人の女性が浮遊していた。銀色の長髪が重力を無視してふわりと揺れ、紫色の瞳が健太を見下ろしている。純白のローブを纏った姿は、まさに神話に登場する女神そのものだった。

「あなたは不慮の事故で命を落としました。本来ならそのまま輪廻の輪に還るところですが、私の管轄する魂の中から、たまたまあなたが選ばれました」

 女神は優雅に微笑みながら続けた。

「私はアルテミシア。異世界転生を司る女神です。あなたには一つだけ、特別なスキルを授けましょう。それを持って、新たな世界で第二の人生を歩んでください」

 健太の脳内で、様々な情報が駆け巡った。これは——間違いない。何度も読んだライトノベルや、やり込んだゲームと同じ展開だ。

「スキル……選べるんですか?」

「ええ。一つだけ、お好きなスキルをどうぞ」

 健太は考え込んだ。無敵になれるスキル? 最強の剣術? 無限の魔力? どれも魅力的だが、もっと根本的なものがあるはずだ。

 そして、一つのアイデアが浮かんだ。

「“魔法の内容を変更できる”スキルをください」

 アルテミシアは一瞬、目を見開いた。しかしすぐに余裕の笑みを取り戻す。

「面白い選択ですね。分かりました、そのスキルを授けましょう」

 彼女が指を振ると、健太の胸の奥で何かが変化するのを感じた。スキルが刻まれた——という確信があった。

「では、異世界への転生魔法を発動します。新たな世界で、素晴らしい人生を——」

 アルテミシアが両手を掲げた瞬間、健太の脳内に魔法の構造が流れ込んできた。

 転生魔法の内容が”視えた”。

 第一段階:対象の魂を抜き取る。
 第二段階:異世界の受け入れ先の身体に魂を入れる。
 補足:この過程で魂の存在しない身体が発生した場合、近くの魂で穴埋めする。

 健太の口角が上がった。

「——対象を変更」

 その言葉と同時に、スキルが発動した。

 アルテミシアの表情が凍りついた。何が起きたのか理解する前に、彼女の身体から銀色に輝く魂が引き抜かれていく。

「なっ……何をして……!」

「あんたが言ったんだろ。魔法の”内容を変更できる”スキルだって」

 健太は笑った。転生魔法の対象を、自分から目の前の女神へと書き換えたのだ。

 アルテミシアの魂が悲鳴を上げながら、どこかへと吸い込まれていく。おそらく異世界の、名も知らぬ誰かの身体の中へ。そして補足条項が発動し——魂の抜けた女神の身体に、最も近くにいた健太の魂が吸い込まれていった。

 ◆

 最初に感じたのは、圧倒的な違和感だった。

 健太——いや、今やアルテミシアの身体を得た彼は、自分の両手を見つめた。細く、白い指。小さな手のひら。爪には淡い光沢があり、まるで宝石のように美しかった。

「……成功、か」

 発した声に驚く。高く、澄んだ声。自分の声ではない——いや、今からはこれが自分の声なのだ。

 彼は改めて自分の身体を確認した。視線を下に向けると、純白のローブの下で二つの膨らみが存在を主張している。恐る恐る手を当てると、柔らかな感触が指を押し返した。

「おお……」

 思わず声が漏れる。これが女性の身体か。いや、女神の身体か。

 心臓が高鳴っていた。倫理的な葛藤よりも、興奮が勝っていた。死んだはずだったのに、今こうして新たな身体を得ている。しかもそれは、絶世の美女たる女神の身体だ。

 彼はローブの胸元に手を入れ、直接その膨らみに触れた。想像以上に柔らかい。指が沈み込み、温かな肉の感触が手のひらに広がる。先端の突起に触れると、背筋に電流が走るような快感が駆け抜けた。

「はっ……」

 思わず息が漏れる。男の身体とは全く違う。こんなに敏感なのか。

 彼はローブを肩から滑り落とした。真っ白な空間の中、女神の身体が露わになる。

 鏡がないのが残念だったが、見下ろすだけでも十分だった。形の良い胸。くびれた腰。なめらかな太もも。全てが完璧な造形だった。自分の手で撫でるたびに、新鮮な快感が身体中を駆け巡る。

 彼は脚の間に手を伸ばした。男としての器官がないことに改めて気づく。代わりにあるのは、縦に走る割れ目。恐る恐る指を這わせると、そこは既に微かに湿り気を帯びていた。

「これが……女の身体か」

 彼は床に——というより、この空間には上下の概念がないのだが——横たわり、本格的に探索を始めた。片手で胸を揉みながら、もう片方の手で下半身を弄る。

 割れ目の上部に、小さな突起を見つけた。そこに触れた瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。

「ひぁっ……!」

 声が勝手に漏れる。こんな敏感な場所があるのか。彼は執拗にその突起を刺激し続けた。くちゅ、くちゅと湿った音が空間に響く。

 指を割れ目の内側に滑り込ませる。熱い。そして驚くほど狭い。自分の指を締め付ける肉壁の感触に、彼は酔いしれた。

「あっ、あっ、んっ……」

 高い声が漏れ続ける。快感が波のように押し寄せ、思考が白く染まっていく。男の身体では味わったことのない、身体の奥から広がるような快感。

 どれくらい続けたか分からない。彼は突然、全身を貫くような絶頂を迎えた。

「ひあぁっ……!」

 身体が勝手にびくびくと震え、意識が一瞬飛びそうになる。男のそれとは全く違う。もっと深く、もっと長く続く快感。余韻に浸りながら、彼は荒い息をついていた。

 ◆

 一通り身体を堪能した後、彼は落ち着いて現状を確認することにした。

 まず、この身体——女神アルテミシアの身体が持つ能力を把握する必要がある。

 意識を集中させると、様々な情報が脳内に流れ込んできた。どうやらこの身体には、元の持ち主の記憶や知識が残っているらしい。

 異世界転生を司る女神としての役割。事故や病気で命を落とした魂を拾い、一つのスキルを与えて、管理下にある異世界のどこかに転生させる。その繰り返し。

「つまり、俺はこの仕事を続けなければならないわけか」

 彼は立ち上がり——いや、浮遊し、ローブを身に纏い直した。浮遊は意識するだけで簡単にできた。この身体は重力に縛られていないらしい。

 女神としての力を確認する。魂を感知する能力。空間を操る能力。転生魔法を行使する能力。どれも元の持ち主であるアルテミシアが持っていたものだが、今は全て彼のものだ。

 そしてもう一つ。胸の奥に刻まれた”魔法の内容を変更できる”スキルも、しっかりと残っている。スキルは魂に紐づくものだ。女神の身体に移っても、彼の魂に刻まれたスキルは消えていない。

「……ふむ」

 彼は考えた。今、アルテミシアの魂はどこかの異世界に飛ばされたはずだ。しかし彼女は何の力も持っていない。女神としての力はこの身体に宿っているし、スキルは彼の魂に刻まれている。

 つまり、彼女は完全に無力な状態で異世界に放り出されたことになる。

「念のため、確認しておくか」

 女神の力で意識を広げた。管理下にある無数の世界の中から、アルテミシアの魂を探す。

 ——見つけた。

 中世ヨーロッパ風の異世界。小さな農村の、貧しい農家の娘として転生していた。年齢は15歳程度。黒髪の少女の身体に、アルテミシアの魂が宿っている。

「ふん、なんとも惨めな境遇だな」

 彼は嘲笑った。かつて神として君臨していた存在が、今や泥にまみれて畑を耕している。しかもスキルも力も持たない、ただの人間として。因果応報というやつだ。

 彼女には何もできない。女神の力は身体に宿るもので、今やこの身体は彼のものだ。スキルは魂に宿るもので、彼女に与えられたスキルは彼の魂に刻まれていた。

 完璧だ。彼女が復讐を企てたところで、何の手段もない。ただの農民の少女として、一生を終えるしかないのだ。

 ◆

 そうこうしているうちに、新たな魂が空間に出現した。

 中年の男性だった。心臓発作で倒れ、そのまま息を引き取ったらしい。茫然とした表情で周囲を見回している。

「え……ここは……」

「お目覚めですか、異世界への転生者様」

 彼はアルテミシアとして——いや、今や本物の女神として——優雅に微笑んだ。声も仕草も、記憶の中にあるアルテミシアを完璧に模倣している。

「あなたは不慮の事故で命を落としました。私はアルテミシア、異世界転生を司る女神です。あなたには一つだけ、特別なスキルを授けましょう」

 男性は目を丸くしていた。異世界転生という概念を知らないタイプらしい。少し説明に時間がかかった。

 最終的に男性は”身体能力強化”という無難なスキルを選び、剣と魔法の世界へと転生していった。

 彼は満足げに頷いた。仕事は問題なくこなせる。この身体で、この役割で、永遠に生き続けることができる。

 ふと、自分の身体を見下ろした。美しい女神の姿。この姿が、今後永遠に自分のものになる。

 悪くない。いや、最高だ。

 元の世界では平凡なサラリーマンだった。何の取り柄もなく、将来の展望もなく、ただ漫然と日々を過ごしていた。そんな人生が事故で終わり——そして今、女神として君臨している。

 彼は白い空間の中で、一人笑い続けていた。

 ◆

 数日が経った——といっても、この空間には時間の概念が曖昧だが。

 彼は女神としての仕事にも慣れてきていた。転生者を迎え、スキルを授け、異世界へ送り出す。その繰り返し。退屈と言えば退屈だが、合間に自分の身体を楽しむ時間は十分にあった。

 今日も彼は、ローブを脱ぎ捨てて自らを慰めていた。

 この身体の快感は何度味わっても飽きない。男の身体では到達できなかった、深い深い快楽。絶頂に達するたびに意識が白く染まり、全身が震える。

「んっ……あっ……」

 指を二本挿入し、奥を刺激する。熱い肉壁が指を締め付け、くちゅくちゅと湿った音を立てる。もう片方の手では胸を揉みしだき、時折突起を抓む。

 絶頂が近づいてきた。身体の奥から熱い塊がせり上がってくるような感覚。彼は指の動きを速め——

 その時、新たな魂が空間に出現した。

「えっ……うわっ、どこだここ!?」

 若い男性だった。おそらく20代前半。交通事故で命を落としたらしい。

 最悪のタイミングだった。彼は慌ててローブを掴み、身体を隠そうとする。しかし絶頂寸前だった身体は言うことを聞かず、びくびくと痙攣を続けていた。

「あ、あの……」

 若い男性は顔を真っ赤にして視線を逸らしている。

 彼はなんとか呼吸を整え、女神らしい威厳を取り繕った。

「……お目覚めですか、異世界への転生者様」

 声が少し上擦っていたが、気づかれなかったことを祈る。

 ◆

 その後も、彼の”女神生活”は続いていった。

 転生者を送り出す仕事をこなしながら、空いた時間は自分の身体を楽しむ。時には異世界を覗き見て、転生者たちがどのような人生を歩んでいるかを観察する。

 アルテミシア——かつての女神——も時折覗き見ることがある。彼女は農村で貧しい暮らしを送っていた。何の力も持たず、ただ黙々と農作業をこなす日々。

 ある日、彼女の様子を覗いていた時のことだった。

 彼女は井戸から水を汲んでいた。重い桶を必死に持ち上げようとしている。かつて神として君臨していた存在が、今では単純な肉体労働に苦しんでいる。

 彼女には何もできない。女神としての力は身体に宿っていたから、今やこの身体を得た彼のものだ。スキルは魂に刻まれるものだから、彼の魂とともにここにある。

 彼女に残されているのは、女神だった頃の記憶だけ。かつての栄光を覚えているからこそ、今の惨めな境遇がより一層堪えるだろう。

 彼は満足げに頷いた。完璧な結末だ。彼女はただの人間として、いずれ老いて死んでいく。その魂は輪廻の輪に還り、記憶も消えてしまう。

 今の自分には、女神としての絶対的な力がある。何も恐れる必要はない。

 白い空間の中、彼はゆっくりとローブを脱ぎ始めた。今日も、この素晴らしい身体を堪能しよう。

 銀色の髪が揺れ、紫色の瞳が妖しく輝く。かつて田中健太だった存在は、今や完全に女神アルテミシアとして生きている。

 そしてその玉座は、永遠に揺るがない——はずだった。