拾った杖と魔法少女
あらすじ
ある男性の帰り道、道端に杖らしきものが落ちているのを見る。杖は女児向けの魔法少女アニメに出てきそうな、ピンク色で色々飾りのついたおもちゃ(プラスチック製)のようなもの。
なんとなく拾ってみると、杖についたスピーカーから音が流れる。ただそれだけかと思いきや、男性の体が魔法少女のキャラクターになっている。
登場人物
佐藤 大輝(さとう だいき)/ 変身後:スターライト・ミーナ (22歳 / 変身後外見は14歳程度)
本作の主人公。普通の会社員として働く、どこにでもいる青年。身長175cm、短い黒髪に、地味だが穏やかな顔立ち。
変身後は「マジカル☆スターライト」の主人公キャラクター「スターライト・ミーナ」の姿になる。身長145cm程度の華奢な少女体型。腰まで届くピンクのツインテール、大きな青い瞳、透き通るような白い肌。白とピンクを基調としたフリルたっぷりの魔法少女衣装を身に纏い、胸元には大きなリボン、スカートは短くふわりとしている。
本文
残業帰りの夜道は、いつもより暗く感じた。
佐藤大輝は、スマートフォンの画面を見ながら駅から自宅アパートへと歩いていた。時刻は既に二十二時を回っている。終電には間に合ったものの、疲労が足取りを重くしていた。
「はぁ……明日も早いのに」
独り言を呟きながら、住宅街の路地を曲がる。街灯の光がまばらに道を照らし、静寂が辺りを支配していた。
ふと、足元で何かがカツンと音を立てた。
「ん?」
見下ろすと、ピンク色の棒状のものが転がっている。
大輝は怪訝な顔でそれを見つめた。明らかに子供のおもちゃだ。長さは三十センチほど。ピンクと白のグラデーションで彩られた軸には、キラキラ光るラメが散りばめられている。先端には星形の飾りがついていて、透明なプラスチックの中に小さなビーズがたくさん入っていた。持ち手の部分には大きなハート型の装飾があり、そこに赤いボタンがある。
どこからどう見ても、女児向けの魔法少女アニメに出てくる「変身ステッキ」そのものだった。
(子供が落としたのかな……)
辺りを見回すが、人影はない。この時間に子供が外にいるはずもなかった。
なんとなく、大輝はそれを拾い上げた。
ずいぶん軽い。やはりプラスチック製のおもちゃだ。裏を見ると「マジカル☆スターライト」というロゴと、「対象年齢3歳以上」という表記があった。
「あー、あれか。今人気のやつ」
電車の中吊り広告で見たことがある気がする。プリキュアとか、そういう系統の魔法少女アニメだろう。妹がいれば詳しかったかもしれないが、男三人兄弟の大輝にはあまり縁のないジャンルだった。
とりあえず、交番にでも届けようか。そう思った時だった。
不意に、杖のハート部分にあるボタンに、大輝の親指が触れた。
カチッ。
乾いた音とともにボタンが押し込まれた。
「――ミラクル☆スターライト・メタモルフォーゼ!」
杖から、甲高い少女の声が響き渡った。内蔵スピーカーから流れる音だ。同時に、ハートの装飾がピカピカと七色に光り始める。
「うわっ⁉」
大輝は反射的に杖を離そうとした。だが、手が動かない。まるで接着剤で固定されたかのように、指が杖に張り付いている。
「なっ、何だこれ⁉」
慌てて振りほどこうとするが、びくともしない。杖の光はますます強くなり、音楽まで流れ始めた。アップテンポで可愛らしい、いかにも変身シーンに使われそうなBGMだ。
その瞬間、大輝の体を光が包み込んだ。
「えっ、ちょっ、待っ――」
視界がまばゆい光で塗り潰される。体中がぞわぞわとした感覚に襲われた。皮膚の表面を無数の虫が這っているような、背筋が総毛立つような奇妙な感覚。
光が収まった時、大輝は自分の体に何が起こったのか、まったく理解できなかった。
「はぁ……はぁ……」
息が上がっている。動悸が激しい。だが、何かが決定的におかしい。
まず、視点が低い。さっきまで見下ろしていた街灯が、やけに高い位置にある。
次に、体が軽い。まるで綿のように、ふわふわと浮いているような感覚。
そして、何よりも。
「……なんだ、これ」
自分の声が、まったく別人のものになっていた。高くて、透き通っていて、可愛らしい少女の声。
大輝は恐る恐る、自分の体を見下ろした。
「嘘だろ……」
白とピンクのフリルが、視界を埋め尽くしていた。
ふわりと広がるスカート。胸元には大きなリボン。細くて白い、明らかに自分のものではない腕。その先の小さな手は、相変わらず杖を握りしめている。
顔に手を当てる。頬が柔らかい。顎のラインが細い。そして、視界の端にピンク色の何かが見える。目を動かして確認すると、それは髪だった。長い、長い、ピンク色のツインテール。
「いや、いやいやいや!」
大輝は、いや、大輝だったものは慌てて周囲を見回した。幸い、深夜の住宅街に人影はない。
近くにあった民家のガラス窓に、自分の姿を映してみる。
そこには、アニメから飛び出してきたような美少女がいた。大きな青い瞳、長いまつげ、小さな鼻と桜色の唇。年齢は十三、四歳くらいだろうか。まさに「魔法少女」としか言いようのない、フリフリの衣装を身に纏った少女。
「……おれ?」
呟くと、ガラス窓の少女も同じように唇を動かした。
間違いない。この少女は、自分自身だった。
パニックだった。
大輝は人目を避けながら、なんとか自宅アパートにたどり着いた。幸い、誰にも見られなかったはずだ。見られていたら、深夜に魔法少女のコスプレをした少女が走り回っていることになる。通報されてもおかしくない。
部屋に入り、鍵をかけ、灯りをつける。
「落ち着け、落ち着け……」
自分に言い聞かせながら、玄関の姿見の前に立つ。
改めて見ても、そこにいるのは完璧な美少女だった。
ピンクのツインテールは腰の辺りまで届いている。髪質はサラサラで艶があり、明らかにウィッグではない自前の髪だ。
衣装は白を基調に、ピンクのアクセントが随所に入っている。襟元と袖口にはたっぷりのフリルがあしらわれ、胸元には大きなリボン。スカートは短く、太ももの半分ほどまでしかない。その下からは白いニーハイソックスと、ピンクのリボンがついたパンプスが覗いている。
大輝は恐る恐る、スカートの裾を摘まんでみた。軽く持ち上げると、その下にはフリルのついた白いアンダースコートが見える。さらにその奥には……。
「……ない」
あるべきものが、なかった。
代わりに、少女としての器官がそこにあることを、下着越しに感じ取れた。
膝から力が抜けた。大輝はその場にへたり込んだ。
「どうすればいいんだ……」
床に座り込んだまま、大輝は途方に暮れていた。
手には相変わらず杖を握っている。というか、握らされている。いくら離そうとしても、指が開かないのだ。
ふと、杖のハート部分にある赤いボタンが目に入った。これを押したら、こうなった。なら、もう一度押したら……。
藁にもすがる思いで、大輝はボタンを押した。
「――スターライト・リリーフ!」
再び杖から声が響き、光が体を包む。次の瞬間、視点がぐんと上がった。
「おっ……おおっ⁉」
慌てて姿見を見る。そこには、見慣れた自分の姿があった。短い黒髪、地味な顔立ち、ワイシャツにスラックスという仕事着姿。
「戻った! 戻ったぞ!」
思わず声を上げる。低い、男の声だ。自分の声だ。
体を確認する。胸は平たく、股間にはあるべきものがある。足元を見ると、履きなれた革靴。完全に元通りだった。
そして、杖を持っていた手を見ると……杖が消えていた。
「あれ?」
足元にも、周囲にも、あのピンクの杖はどこにもない。
「消えた……のか?」
夢でも見ていたのだろうか。だが、あの感覚はあまりにもリアルだった。揺れる髪の感触、軽くなった体、高くなった声、そして、股間の違和感。
とにかく疲れた。大輝はそのままベッドに倒れ込み、いつの間にか眠りについた。
翌朝、目を覚ました大輝は、すべてが夢だったことを願った。
だが、現実は非情だった。
枕元に、あのピンクの杖がちょこんと置かれていたのだ。
「うわあぁぁ!」
思わず悲鳴を上げ、ベッドから飛び退く。
杖は何事もなかったかのように、そこにある。キラキラ光るラメ、星型の飾り、ハート型の装飾。間違いなく昨晩拾ったあの杖だ。
大輝は恐る恐る杖を手に取った。冷たいプラスチックの感触。軽い重量。何の変哲もないおもちゃにしか見えない。
だが、昨晩のことは現実だった。このボタンを押せば、自分はあの魔法少女になってしまう。
その日は土曜日だった。
仕事が休みなのは幸いだった。こんな精神状態で出社できるはずがない。
大輝はベッドの上で膝を抱え、杖をじっと見つめていた。
(なんで俺にこんなことが起こるんだ……)
考えても答えは出ない。捨てようかとも思ったが、昨晩消えたはずの杖が朝には戻ってきている。おそらく、どこに捨てても戻ってくるのだろう。
もしかしたら、昨晩は混乱していて気づかなかったことがあるかもしれない。落ち着いて、もう一度確認してみるべきではないか。
大輝は意を決して、赤いボタンを押した。
「――ミラクル☆スターライト・メタモルフォーゼ!」
光に包まれ、体が変容する。今度は心の準備ができていたせいか、昨晩ほどの混乱はなかった。
光が収まると、そこにはまたあの魔法少女がいた。
姿見の前に立ち、改めて自分の姿を確認する。
「やっぱり、すごいな……」
思わず呟く。完璧な変身だ。どこをどう見ても、アニメのキャラクターそのものの美少女。
服装は昨晩と同じ。白とピンクのフリル衣装。だが、今日は落ち着いて細部を観察する余裕があった。
布地はサテンのような光沢があり、意外としっかりした作り。フリルは立体的で、まるでプロのコスプレ衣装のようだ。いや、それ以上かもしれない。この世のどんな布でも再現できないような、不思議な質感だった。
髪に触れてみる。サラサラで、指通りが良い。ほのかに甘い香りがする。シャンプーの匂いとも違う、もっと本能的に心地よい香り。
顔に手を当てる。肌はつるつるで、毛穴ひとつ見当たらない。唇はぷっくりと潤いがあり、頬は柔らかくて弾力がある。
そして、視線を下に向ける。
胸元には、昨晩は気づかなかったが、小さな膨らみがあった。まだ成長途中といった感じの、控えめな胸。それでも確実にそこにある、女性としての象徴。
大輝は恐る恐る、両手を胸に当ててみた。
「っ……!」
びくりと体が震えた。
柔らかい。驚くほど柔らかくて、そして敏感だった。服越しに触れただけで、妙に落ち着かない感覚が体の奥を駆け抜ける。
これは、まずい。
大輝は慌てて手を離した。心臓がドキドキと高鳴っている。いや、この体では心臓の位置も違うのだろうか。胸の辺りがざわざわする。
呼吸を整えようとするが、浅い呼吸しかできない。この体は肺活量が小さいのか、すぐに息が上がってしまう。
鏡を見ると、魔法少女が頬を赤く染めて荒い息をついていた。大きな青い瞳が潤んでいる。
「なんだよこれ……エロすぎだろ……」
自分で自分の姿を見て、そう思ってしまう異常さ。だが、客観的に見て、今の自分の姿は「そういう」目で見られても仕方のない状態だった。
一度落ち着こう。大輝はベッドに腰掛けた。
座ると、スカートがふわりと広がる。太ももがほとんど露出してしまう短さ。白いニーハイソックスとの間の、絶対領域と呼ばれる素肌が眩しい。
改めて、スカートの中身が気になった。
昨晩はパニック状態だったので、ちゃんと確認していない。本当に、あそこは女性のものになっているのだろうか。
周囲を確認する。当然、誰もいない。自分の部屋だ。
大輝は恐る恐る、スカートの裾をめくり上げた。
フリルのついた白いアンダースコート。その下に、これも白い、シンプルだが上品なショーツ。
心臓がうるさいほどに鳴っている。これほど緊張するのは、初めて彼女とそういう行為をした時以来かもしれない。いや、あの時以上かもしれない。
震える指で、ショーツの端に手をかける。
ゆっくりと、下ろしていく。
そこにあったのは、つるりとした縦のスジだった。
毛は一本も生えていない。まるで陶器のような、白く滑らかな肌。そのまんなかに、薄く筋が入っている。間違いなく、女性の外性器。
「……マジかよ」
呆然と呟く。視覚的に確認したことで、現実味が一気に増した。
自分は今、完全に女の体になっている。それも、十代前半の少女の体に。
好奇心が、理性に勝った。
大輝は、そこに指を当ててみた。
「ひぅっ……!」
甲高い声が漏れた。
電流が走ったような感覚。触れただけで、体の芯がぞくりと震える。
男の時とは比較にならない敏感さ。皮膚の下を、何か熱いものが駆け巡る感覚。
指をほんの少し動かすと、自分の意思とは無関係に腰が跳ねた。
「やっ……なに、これ……」
こんなの知らない。男の自慰とはまるで違う。快感の質が根本から異なる。
もう少しだけ。そう思って、大輝は指を動かし続けた。
気がつくと、大輝はベッドに仰向けになっていた。
意識がぼんやりとしている。体中から力が抜けて、指一本動かすのも億劫だ。
何が起こったのか、記憶を辿る。
最初は怖々と触れていただけだった。だが、その感覚があまりにも未知で、刺激的で、つい夢中になってしまった。
割れ目に沿って指を滑らせると、ぬるりとした感触があった。自分の体から分泌された液体。それに気づいた瞬間、羞恥で顔が熱くなった。だが、同時に興奮も高まった。
上の方に、特に感じる場所を見つけた。小さな突起。軽く触れただけで、視界がちかちかと明滅するほどの快感が走った。
そこを中心に、円を描くように刺激を与える。息が荒くなる。声が抑えられなくなる。甘い声が、勝手に喉の奥から溢れ出てくる。
「あっ、あっ、んっ……!」
快感が加速度的に膨らんでいく。お腹の奥で何かが渦を巻いている。このまま行けば、何か決定的なことが起こる。そんな予感。
指の動きが速くなる。荒くなる。もう止められない。
「やっ、やだ、なにこれ、来る、来ちゃう……!」
そして、閾値を越えた。
「あああぁぁっ……!」
視界が真っ白になった。
意識が体から離れていくような感覚。全身の筋肉が痙攣し、背中がベッドから浮き上がる。頭の中で何かが弾けて、思考という思考がすべて吹き飛んだ。
波のような快感が、何度も何度も押し寄せてくる。終わったと思った瞬間にまた次の波が来て、体が勝手にびくびくと跳ねる。
どれくらいそうしていたのか分からない。気がつくと、大輝はぐったりとベッドに横たわっていた。
「……すごかった」
呆然と天井を見つめながら、大輝は呟いた。
男としての絶頂も知っている。だが、今経験したそれは、次元が違った。一点に集中する快感ではなく、全身を包み込むような、波のような快感。終わった後の余韻も長く、今もまだ体の奥がじんわりと熱い。
これが、女の快感。
そう思うと、また変な気持ちになりそうで、大輝は慌てて頭を振った。
股間の辺りがぬるぬるしている。見ると、ショーツが濡れてしまっていた。太ももの内側にも、透明な液体が伝っている。
「……洗わないと」
起き上がろうとするが、まだ足に力が入らない。しばらくそのままベッドで休むことにした。
結局、その日は何度もボタンを押した。
変身しては元に戻り、元に戻っては変身し。
変身中は杖を手放せないことも分かった。どれだけ強く投げ捨てようとしても、指が杖から離れない。
変身を解除すると杖は消え、しばらくすると自分の近くに現れる。これは逃れられない運命なのだと、大輝は悟り始めていた。
そして、変身するたびに、その体を探求してしまった。
昼過ぎには、乳首を触ることを覚えた。服を脱ぐと、そこには小さいながらもちゃんと形のある乳房があった。先端のピンク色の突起を指で弾くと、声を抑えられないほどの快感が走った。
夕方には、中に指を入れることを覚えた。自分の体から分泌される液体を潤滑剤にして、恐る恐る一本だけ挿入する。異物感と、充足感と、そして快感。奥の方に指を曲げると、特に感じる場所があることも発見した。
夜には、もう慣れたものだった。
「ん、あぁっ、そこ、いい……っ」
ベッドの上で、大輝は自分で自分を犯していた。
左手で胸を揉みながら、右手の指二本を自分の中に出し入れする。変身杖は右手の小指と薬指で握ったまま、器用に人差し指と中指を動かしていた。
鏡に映る光景は、淫らとしか言いようがなかった。
魔法少女の衣装は既にはだけており、白い肌が露わになっている。胸を揉む左手、股間に沈む右手、そして蕩けた表情で喘ぐ幼い顔立ち。
男だった自分が、今、少女の体で自慰に耽っている。その背徳感が、快感をさらに増幅させた。
「もっと、もっとぉ……っ」
高い声で喘ぎながら、指の動きを速める。ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が部屋に響く。
お腹の奥が熱い。例の感覚が迫ってきている。もうすぐ。もうすぐ来る。
「やっ、イク、イっちゃうぅ……!」
体が弓なりに反り返り、長い長い絶頂が訪れた。
何度目かのオーガズムの後、大輝はぐったりとベッドに横たわったまま、ぼんやりと考えていた。
これは、まずい。
楽しすぎる。気持ち良すぎる。このままでは、戻らなくなりそうだ。
元々、女体には興味があった。というか、女が好きだ。当然のことだ。だが、まさか自分自身がその女体になれるとは思わなかった。
しかも、ただの女ではない。アニメから飛び出してきたような、完璧な美少女。理想を形にしたような容姿と、敏感すぎる体。
抜け出せなくなる前に、杖を封印したほうがいいのではないか。
でも、もうちょっとだけ。もうちょっとだけ、楽しんでからでも遅くないのではないか。
そんな葛藤を抱えながら、大輝は眠りについた。
翌朝、目を覚ますと、案の定枕元に杖があった。
日曜日。今日も休みだ。
大輝は杖を見つめ、深いため息をついた。
もう腹を括るしかない。この杖とは、これから長い付き合いになりそうだ。
せめて、今のうちにこの体のことをもっと深く知っておこう。変身できる時間に制限があるのか、何か特殊な力が使えるのか、食事はどうなるのか。
そう自分に言い訳をしながら、大輝は赤いボタンを押した。
「――ミラクル☆スターライト・メタモルフォーゼ!」
光に包まれ、魔法少女が誕生する。
今日も長い一日になりそうだ。