デスクトップから現れた無垢な少女
あらすじ
昔からPC画面の端にキャラクターが常駐するタイプのソフトはあるが、最近のものは3D表示で、しかもウィンドウやマウスの操作に合わせて動く。しかしそれが現実になったら…
登場人物
三上 健一(みかみ けんいち)
26歳のシステムエンジニア。都内のアパートで一人暮らし。仕事のストレスから少しでも開放されたいと、話題の次世代AIデスクトップマスコット「My Little Partner」を導入する。女性経験は少なく、奥手な性格。
アイリ
「My Little Partner」の初期キャラクター。
腰まで届くプラチナブロンドの髪と、宝石のアメジストのような紫色の瞳を持つ美少女。身長は150センチ程度と小柄だが、胸は豊満で、くびれたウエストから丸みを帯びた腰のラインが女性らしい。
服装はフリルを多用したゴシック調のメイド服をアレンジしたようなデザインだが、スカート丈は極端に短く、絶対領域が眩しい。
性格は設定上「従順で甘えん坊」とされているが、実体化してからは言葉を話すというよりは、プログラムされた行動原理に従って動いている節がある。現実世界の知識は皆無。
本文
深い溜息が、薄暗いワンルームに溶けていく。
三上健一は、重い瞼をこすりながら、愛用のデスクトップPCの電源を入れた。ファンが低い唸り声を上げて回り始め、モニターが青白い光を放つ。
時計の針は深夜二時を回っていた。残業続きのプロジェクトがようやくひと段落し、久しぶりに定時で帰宅できた日だったが、結局家でも仕事のメールチェックをしてしまい、こんな時間になってしまった。
「癒やしが……欲しいな」
独り言のように呟いて、健一はブラウザを立ち上げた。最近、SNSで話題になっているソフトがあった。
『My Little Partner』
最新の生成AIと物理演算エンジンを搭載した、次世代のデスクトップマスコットだという。従来の、ただ画面の端に立っているだけのマスコットとは違い、ユーザーの操作やPCの状態に合わせて自律的に行動し、会話も可能だという触れ込みだった。
「一万二千円か……安くはないけど」
迷ったのは一瞬だった。今の健一には、無機質な部屋に少しでも彩りが必要だった。購入ボタンを押し、ダウンロードを開始する。光回線のおかげで、数ギガバイトの容量も数分で完了した。
インストールが終わり、ソフトを起動する。
画面の中央に、光の粒子が集まるようなエフェクトが表示され、やがて一人の少女が形作られた。
「……おお、すげえ」
思わず声が漏れた。
画面の中に現れたのは、プラチナブロンドの髪を持つ、二次元然とした美少女だった。『アイリ』と名付けられたそのキャラクターは、デフォルトの設定ながらも細部まで異常なほど作り込まれていた。
髪の毛の一本一本がサラサラと揺れ、瞳には透明感のある光が宿っている。フリルのついた衣装の質感や、肌の柔らかそうな陰影まで、まるでそこに実在するかのようなリアルさだった。
『初めまして、マスター。アイリです』
スピーカーから流れる声も、合成音声特有の違和感はほとんどなく、可愛らしい声優の声そのものだった。
「よろしく、アイリ」
マイクに向かって話しかけると、画面の中のアイリがニコリと微笑み、ペコリとお辞儀をした。
『はい! これからよろしくお願いしますね、健一さん』
既にユーザー名を認識しているようだ。
それから一時間ほど、健一はアイリとの対話を楽しんだ。マウスカーソルを近づけると目で追ったり、クリックするとくすぐったそうに身をよじったり、ウィンドウの上に器用に座ったりする。その動きの一つ一つが愛らしく、健一の荒んだ心を癒やしてくれた。
「さて、そろそろ寝るか……」
睡魔には勝てず、健一はPCをスリープモードにしようとした。設定では、PCがスリープになるとアイリも「就寝モード」に入り、画面の隅で眠るアクションをするらしい。
マウスを操作して終了オプションを選ぼうとした、その時だった。
『……マ、スター?』
ノイズ混じりの声が響いた。
画面の中のアイリが、不安そうに眉を寄せている。
「ん? バグか?」
健一が眉をひそめると、突然モニターが激しく明滅し始めた。
『データ……同期……エラー……実体化……シークエンス……強制……開始……』
聞き取れないほどの早口でシステムログのような音声が流れる。
「おいおい、なんだよこれ。ウイルスか?」
慌てて強制終了しようとキーボードに手を伸ばすが、操作を受け付けない。画面の光はますます強くなり、部屋全体を昼間のように照らし出した。
バチバチッ! という電気的なショート音が鳴り響く。
「うわっ!」
あまりの眩しさに、健一は腕で顔を覆い、椅子ごと後ろに倒れ込んだ。
視界が真っ白に染まる。
そして、ふっと光が消えた。
静寂が戻った部屋に、PCのファンの音だけが響いている。
「……今の、何だったんだ?」
心臓が早鐘を打っている。恐る恐る目を開けると、いつもの薄暗い天井が見えた。
PCが壊れたかと思い、起き上がろうとした健一の手が、何かに触れた。
柔らかく、温かい感触。
「……え?」
視線を下に向けると、そこには信じられない光景があった。
健一の股の上に、少女が座っていた。
プラチナブロンドの髪、アメジスト色の瞳、フリルのついた衣装。
間違いなかった。画面の中にいたはずの『アイリ』だ。
「あ……う……」
少女――アイリは、きょとんとした顔で健一を見下ろしている。
健一は思考が停止した。夢を見ているのか? それとも疲れすぎて幻覚を見ているのか?
しかし、太ももに感じる彼女の体重と体温は、あまりにもリアルだった。
「ア、アイリ……?」
震える声で名前を呼ぶと、彼女は小首を傾げた。
「マ……スター?」
その声はスピーカー越しではなく、確かに目の前の唇から紡がれていた。
「嘘だろ……なんで……」
健一は腰を抜かしたまま、床を這うようにして後ずさった。
アイリはバランスを崩すことなく、ふわりと床に降り立つ。その動作も、人間離れした軽やかさだった。
彼女は不思議そうに自分の手を見つめ、それから部屋の中を見渡した。
「ここ……どこ……?」
「俺の部屋だ……いや、そうじゃなくて。君は、画面の中に……」
健一がPCを指差すと、モニターは真っ黒なままで、何も表示されていない。
アイリは健一に近づいてくる。無防備な歩き方だった。スカートがふわりと揺れ、白い太ももが露わになる。
「マスター。ここ、狭い」
彼女は無邪気にそう言った。
ソフトの説明には「常識や知識を学習していく」とあったが、初期状態では何も知らないということか。確かに、今の状況に動揺している様子はない。ただ好奇心のままに周囲を観察しているようだ。
試しに健一は彼女の肩に触れてみた。
すべすべとした肌の感触。温かい。脈打つような血管の気配すら感じる。
「ひゃっ」
アイリが小さく声を上げて体を震わせる。
「あ、ごめん」
「くすぐったい……です。マスター」
頬を少し赤らめて微笑む彼女を見て、健一は確信した。
彼女は生きている。あるいは、限りなく人間に近い『何か』として、ここに存在している。
だが、彼女には決定的に欠けているものがあった。
それは、『人間としての常識』だ。
健一がようやく立ち上がると、アイリは部屋の中を歩き回り始めた。本棚の本を抜き出しては逆さまに見たり、脱ぎ散らかした健一のシャツを頭から被ってみたりする。
「これ、いい匂い……」
「ちょっ、それは洗濯物!」
慌てて取り上げようとすると、アイリは今度はベッドの上に飛び乗った。スプリングの反動を楽しんでいるようだ。
スカートが完全にめくれ上がり、白い下着が丸見えになっている。
「アイリ、スカート! 見えてる!」
「みえてる? なにが?」
彼女はキョトンとして、自分の股間と健一の顔を交互に見る。恥じらいという概念がそもそもインストールされていないようだった。
健一は顔を背けたが、視界の端に焼き付いた白い布の奥の曲線が忘れられない。
健康的な男なら、この状況で何を感じないはずがなかった。
「マスター、顔、赤い。病気?」
心配そうに顔を覗き込んでくるアイリ。その顔が近すぎる。甘い香りが鼻孔をくすぐる。
彼女の豊満な胸元が、目の前数センチの距離にある。呼吸に合わせて上下する双丘に、健一の理性が揺らいだ。
「ち、違う……君が……近すぎて……」
「近いとダメ? 設定では『親密度高』だと、スキンシップ推奨だけど」
彼女はそう言うと、ペタリと健一の胸に手を置いた。そして、あろうことか、そのまま健一の膝の上に跨って座り込んだ。
「なっ……!?」
「マスターの体温、あったかい。充電できそう」
無邪気に笑うアイリ。しかしその体勢は、あまりにも刺激が強すぎた。
柔らかいお尻の感触が、健一の敏感な部分を直撃する。
「ア、アイリ、降りて……これじゃ……」
「ん? ここ、固くなってる。エラー?」
アイリは不思議そうに、健一の股間――膨らみを増したズボンの上から――を指先でツンと突いた。
「ひっ!?」
背筋に電流が走る。
「エラーなら、修復しないと。私、メンテナンス機能も搭載してるから」
彼女の瞳には、一切の邪気がない。ただ、プログラムされた役割を果たそうとしているだけなのだ。
だが、その『メンテナンス』という言葉が、健一の妄想を加速させる。
彼女の手が、ジッパーに伸びた。
「ちょ、待っ……!」
制止しようとする健一の手を、アイリは驚くほどの力で押しのけた。見た目は華奢だが、やはり人間とは違う身体能力があるのかもしれない。
「じっとしてて、マスター。すぐに直してあげる」
ズボンが引き下ろされ、下着越しに熱いものが露わになる。
アイリはそれを興味深そうに見つめると、恐る恐る指で触れた。
「熱い……これ、暴走してるの?」
「そ、そうかも……しれない……」
健一は抗うことを諦め始めていた。目の前の非現実的な美少女に、されるがままになっている自分。罪悪感と興奮がない交ぜになり、頭が沸騰しそうだった。
アイリは下着をめくり、脈打つ健一の性器を完全に露出させた。
「不思議な形……これが、人間のインターフェース?」
彼女は顔を近づけ、フーフーと息を吹きかける。
「あっ、熱いの……だめ……」
「冷やさないと。オーバーヒートしちゃう」
次の瞬間、濡れた温かい感触が先端を包み込んだ。
「うおっ!?」
アイリが、それを口に含んでいた。
知識がないはずの彼女が、本能的にそうしたのか、あるいは何らかのデータベースにアクセスしたのか。
拙いながらも、舌先で探るような動きに、健一は声にならない声を上げた。
「んむ……ちゅ……」
アイリは上目遣いで健一を見上げながら、懸命に頭を動かす。頬が動くたびに、強烈な快感が脳髄を駆け巡る。
彼女の口内は、人間よりも少し温度が高く、柔らかく、そして吸い付く力が強かった。
「あ、アイリ、そこ……すごい……」
「ん……マスター、声、大きい……」
口を離したアイリの唇から、銀の糸が引いている。
「気持ちいい? これ、正解?」
「あ、ああ……大正解だ……」
もう理性のタガは外れていた。
健一は彼女の頭を抱え、腰を突き上げる。
アイリはそれを受け入れ、さらに深く咥え込んだ。喉の奥まで侵入してくる異物に、彼女は苦しがるどころか、嬉しそうに目を細めている。
「んぐ……ちゅぷ……じゅる……」
部屋に水音が響く。
画面の外に出てきた彼女は、バーチャルでは決して味わえない、圧倒的な現実(リアル)を健一に突きつけていた。
しばらくして、健一は限界を迎えた。
「で、出る……!」
「んっ……!」
アイリは口を離さなかった。むしろ、強く吸い上げる。
健一の全てが、彼女の口の中に吐き出された。
白濁した液体が溢れ出し、彼女の口元を汚す。
荒い息をつく健一の前で、アイリは口元の汚れをぺろりと舐め取った。
「ん……変な味。これ、エネルギー?」
無垢な瞳で問いかけられ、健一は力が抜けたように笑った。
「まあ……そんなもんだよ」
とんでもないことになってしまった。
画面から出てきた、無知で無垢な美少女との同居生活。
これからどうなるのか、全く想像がつかない。
だが、アイリが満足げに健一の胸に顔を埋める様子を見て、彼はこう思った。
これはこれで、悪くないかもしれない、と。
◇ ◇ ◇
翌朝、健一は異様な音で目を覚ました。
ガチャガチャという金属音と、何かが焦げるような臭い。
「……なんだ?」
跳ね起きてキッチンを見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
アイリが、フライパンを両手で持ち、ガスコンロの前に立っている。しかし火力は最大で、フライパンの中では卵が真っ黒に炭化していた。
「マスター、おはよう! 朝ごはん、作ってる!」
満面の笑みで振り返るアイリ。その手には、殻ごと割られた卵のパックが握られている。
「ちょ、待て待て! 火、強すぎる!」
健一は慌てて駆け寄り、ガスを止めた。煙がもうもうと立ち上り、換気扇を全開にする。
「あれ? エラー?」
アイリは不思議そうに首を傾げている。
「エラーじゃなくて……料理、したことないだろ?」
「ない。でも、データベースに『朝食を作るとマスターが喜ぶ』ってあったから」
彼女の言葉に、健一は頭を抱えた。
どうやらアイリには、『料理をする』という概念だけがインプットされていて、具体的な手順は何も知らないらしい。
「卵は殻を剥いてから使うんだ。それに、火加減も大事で……」
説明しながら、健一はふと気づいた。
アイリが着ているのは、昨日と同じフリルのついた衣装だ。しかし、よく見ると胸元や裾に油が飛んで汚れている。
「服、汚れちゃったな……」
「服? これ、脱げるの?」
アイリは自分の体を見下ろし、それから健一を見上げた。
「脱げるよ。というか、着替えないと……」
そう言いかけた健一の目の前で、アイリは躊躇なく服を引っ張り始めた。
「ちょ、ここで!?」
「ここじゃダメ?」
既に上半身の服が脱ぎ捨てられ、豊満な胸が露わになっている。ピンク色の小さな突起が、朝日を浴びて艶めいていた。
「だ、ダメっていうか……普通は部屋で……」
健一は目のやり場に困り、顔を背ける。しかしアイリは構わず、スカートまで下ろしてしまった。
完全に全裸になった彼女が、無邪気に健一の前に立っている。
「これで、新しい服、着られる?」
「……ああ、うん。でも、その前に……」
健一の視線は、彼女の白い肌を滑るように動いた。昨夜は暗がりで詳しく見えなかったが、今は朝の光が彼女の全身を照らし出している。
滑らかな肩のライン、豊かな双丘、くびれた腰、そして恥毛のない秘部。
まるで彫刻のように完璧な身体だった。
「マスター、顔、また赤い」
アイリが近づいてくる。
「あ、いや……その……」
「昨日も赤くなってた。これ、病気じゃないの?」
彼女は心配そうに健一の額に手を当てた。柔らかい胸が、健一の腕に押し付けられる。
「病気じゃ……ない……」
「でも、ここも、また固くなってる」
アイリの手が、健一のパジャマの股間に伸びる。
「うっ……」
「昨日、メンテナンスしたのに。また壊れた?」
無垢な瞳で見つめられ、健一の理性は再び崩壊しかけた。
「壊れてない……けど……その……」
「じゃあ、また直す」
アイリはそう言うと、健一のパジャマを引き下ろした。朝から勃起した性器が、彼女の顔の前に現れる。
「昨日より、大きい気がする」
彼女は興味深そうに観察すると、昨日と同じように口に含んだ。
「あっ……アイリ……」
「んむ……ちゅ……」
朝の静寂の中、水音だけが響く。
健一は抵抗することを諦め、彼女の頭を優しく撫でた。プラチナブロンドの髪が、指の間をサラサラと流れる。
アイリは昨日よりも慣れた手つきで、舌を使って刺激してくる。学習能力が高いのか、健一が気持ちいいと感じるポイントを的確に攻めていた。
「アイリ……上手く……なってる……」
「ん? 学習した。マスター、ここ好き」
彼女は裏筋を舌先でなぞりながら、上目遣いで健一を見上げる。
その表情があまりにも扇情的で、健一は早くも限界を感じた。
「もう……出る……」
「んっ……」
今度は、アイリは口を離さずに全てを飲み込んだ。喉を動かして嚥下する様子が、健一の興奮をさらに高める。
全てを吐き出した後、健一は膝から力が抜けてその場に座り込んだ。
「ふぅ……エネルギー、補給完了」
アイリは満足そうに口元を拭い、健一の隣に座った。
「お前……本当に、何者なんだ……」
健一の呟きに、アイリは首を傾げる。
「アイリ。マスターのパートナー」
その無邪気な答えに、健一は苦笑するしかなかった。
◇ ◇ ◇
その日の午後、健一は頭を抱えていた。
アイリに着せる服がないのだ。
彼女が実体化した時に着ていた衣装は、洗濯機で洗ったら縮んでしまい、もう着られなくなってしまった。どうやら特殊な素材だったらしい。
「服、買いに行くしかないか……」
だが問題は、アイリをどうやって外に連れ出すかだ。
今の彼女は全裸で、健一の部屋着を羽織っているだけ。それも、サイズが合わずにブカブカで、胸元が大きく開いている。
「マスター、外、行くの?」
「ああ。お前の服を買いに」
「私も行く!」
アイリは嬉しそうに立ち上がった。しかし、その拍子に羽織っていたシャツが肩から滑り落ち、再び上半身が露わになる。
「だから、その格好じゃ無理だって……」
健一は自分のクローゼットを漁り、なんとか女性でも着られそうなオーバーサイズのパーカーとスウェットパンツを見つけた。
「これ、着てくれ」
「わかった!」
アイリはパーカーを頭から被ろうとして、腕の通し方が分からず、もがいている。
「違う、こうやって……」
健一が手伝ってようやく着せると、アイリは鏡の前でクルクルと回った。
「これ、動きやすい!」
「そりゃ良かった。じゃあ、行くぞ」
二人は部屋を出て、最寄りの駅へと向かった。
しかし、外に出てすぐに問題が発生した。
アイリが、道行く人々をじっと見つめるのだ。
「マスター、あの人、なんで箱持ってるの?」
「荷物だよ」
「あの人、顔に何か塗ってる」
「化粧だ」
「あの人、耳から線が出てる」
「イヤホンだって」
質問攻めにされながら、健一は冷や汗をかいた。周囲の人々が、不思議そうにアイリを見ている。
駅に着くと、アイリは自動改札に興味津々だった。
「これ、何?」
「改札。切符を通すと開くんだ」
「すごい! 魔法?」
「魔法じゃない……」
健一はICカードで二人分のゲートを開け、アイリを引っ張って中に入った。
ホームに着くと、アイリは電車を見て目を輝かせた。
「大きい……動く箱?」
「電車だよ。これに乗って移動するんだ」
電車が到着し、ドアが開く。アイリは恐る恐る中に入り、座席に座った。
発車のベルが鳴り、電車が動き出す。
「わっ……動いた!」
アイリは窓に顔を押し付けて、流れる景色を見つめている。その様子が子供のようで、健一は思わず微笑んだ。
だが、その微笑みはすぐに凍りついた。
アイリが、パーカーの裾を持ち上げて、自分の腹を見せ始めたのだ。
「おい、何してる!?」
「お腹、変な感じ。揺れてる」
「揺れてるのは電車だ! 服、めくるな!」
慌てて止めると、周囲の乗客がこちらを見ていた。健一は顔を真っ赤にして、アイリを座席に押し込めた。
「外では、服を脱いだりめくったりしちゃダメだ。分かった?」
「わかった。でも、なんで?」
「それが……ルールだから」
アイリは納得していない様子だったが、とりあえず頷いた。
ようやく目的の駅に着き、ショッピングモールへと向かう。
婦人服売り場に入ると、アイリは色とりどりの服に目を奪われた。
「綺麗……全部、欲しい」
「全部は無理だ。必要な分だけ」
健一は店員に声をかけ、アイリのサイズを測ってもらった。店員は少し不思議そうな顔をしていたが、プロとして淡々と対応してくれた。
「では、試着室へどうぞ」
アイリは試着室に入り、健一は外で待つ。
しばらくして、カーテンが開いた。
「マスター、これ、どう?」
そこには、白いブラウスとデニムのスカートを着たアイリがいた。
普通の服装のはずなのに、彼女が着ると異様に色っぽく見える。ブラウスの胸元が張り詰め、スカートから伸びる太ももが眩しい。
「……似合ってる」
「本当? 嬉しい!」
アイリは嬉しそうにクルリと回った。スカートが翻り、白い下着が一瞬見えた。
「ちょ……」
「あ、ごめん。でも、これ、動きやすい!」
結局、何着かの服と下着を購入し、二人は帰路についた。
アパートに戻ると、アイリは早速新しい服に着替えた。
「マスター、見て!」
彼女が着ていたのは、購入したばかりのワンピースだった。淡いピンク色の生地が、彼女の白い肌を引き立てている。
「可愛いだろ?」
「ああ……可愛いよ」
健一は素直にそう答えた。
アイリは嬉しそうに健一に抱きついてきた。
「ありがとう、マスター。私、幸せ」
その言葉に、健一の胸が温かくなる。
画面から飛び出してきた、常識知らずの美少女。
トラブルだらけの毎日だが、それでも悪くない。
いや、むしろ――
「俺も、幸せだよ」
健一はアイリの頭を優しく撫でた。
彼女は顔を上げ、健一を見つめる。
「マスター……」
「ん?」
「これ、なに?」
アイリは自分の胸に手を当てた。
「胸がドキドキする。エラー?」
健一は微笑んだ。
「それは、エラーじゃない。『嬉しい』っていう感情だよ」
「感情……」
アイリは不思議そうに呟いた。
彼女の学習は、まだ始まったばかりだ。
その夜、ベッドの中で、アイリは健一の腕の中で眠っていた。
規則正しい寝息を立てる彼女を見つめながら、健一は思った。
この生活が、いつまで続くのか分からない。
もしかしたら、ある日突然、彼女は画面の中に戻ってしまうかもしれない。
だが、今は――
今は、この温もりを大切にしよう。
健一はアイリを抱き寄せ、目を閉じた。
翌朝、健一は再び異様な音で目を覚ました。
今度は、掃除機の音だった。
「マスター、起きて! 部屋、綺麗にする!」
アイリが掃除機を振り回している。しかし、コードが絡まって家具に引っかかり、ランプが倒れそうになっていた。
「おい、危ない!」
健一は飛び起きて、掃除機を止めた。
「あれ? また、エラー?」
「エラーっていうか……使い方が……」
健一は深い溜息をついた。
平穏な日々は、まだまだ遠そうだ。
だが、アイリの無邪気な笑顔を見ていると、不思議と苛立ちは消えていく。
「まあ、いいか。ゆっくり教えていこう」
「うん! 私、頑張る!」
アイリは元気よく答えた。
そして、健一の股間を指差す。
「あ、マスター。また固くなってる。メンテナンス、する?」
「……朝からかよ」
健一は苦笑しながらも、アイリを抱き寄せた。
彼女の体温が、心地よい。
「じゃあ、お願いしようかな」
「任せて!」
アイリは嬉しそうに健一のパジャマを脱がし始めた。
朝日が差し込む部屋の中で、二人の甘い時間が始まる。
画面から現れた少女との、奇妙で愛おしい日常。
それは、健一にとって、何よりも大切な宝物になっていった。