空っぽの楽園
あらすじ
機械化技術が登場し、人々は次第に機械へと身体を移し、永遠の生命を手に入れ始めた。機械へ移行すると、飲食が不要(疑似的に行うことはできる)になり、インターネット上のサービスをスマホやPCを介さず使用できるようになる。また、他の機械化した人とは通信により瞬時に大量のデータを送受信できるため、話す必要もなくなる。
しかしそれは表向きの話。人々、それも機械化技術を開発した人達も含め、誰もその技術の問題点を知らなかった。この技術は移行する際、生態脳と電子頭脳を組み合わせることにより、(コピーではない)意識を移行できるように作られている。そのプロセスには欠陥があり、機械の体には自我や人格が残らなかった。記憶は移行されているので表面上は何も問題なく移行出来ているように見えるが、中身は空っぽ。
世界観
universe/empty_paradise.md
登場人物
佐藤 拓也(さとう たくや)
21歳の大学生。目立たない存在で、周囲に流されやすい性格だが、内心では他人を見下している部分がある。機械化手術への恐怖と金銭的な理由から機械化を先延ばしにしていた。美咲が機械化し「人形」になったことに気づき、歪んだ欲望を解放していく。
桐谷 美咲(きりたに みさき)
拓也の幼馴染で、大学のアイドル的存在。20歳。明るく誰にでも優しい性格だったが、流行に乗って機械化手術を受けたことで自我を消失。現在は拓也の命令に絶対服従する、美しき肉人形となっている。
田辺 健一(たなべ けんいち)
拓也の友人。機械化済み。かつては熱血漢だったが、現在はただの命令待ちの機械と化している。
本文
大学の講義室は、今日も死んだように静かだった。
教授の声だけが淡々と響く。学生たちは微動だにせず、ただ前を見つめている。
かつてのような私語も、居眠りも、スマホをいじる音もない。
全員が機械化しているからだ。
「……以上が、今回の講義内容となる」
教授が言い終わると同時に、学生たちは一斉に動き出し、無言で教室を出ていく。その光景は、まるで工場のラインを流れる製品のようだった。
「おい、佐藤」
教室に残っていた俺に声をかけてきたのは、友人の田辺だった。いや、「田辺だったモノ」と言うべきか。
「なんだ、田辺」
「今日の午後の予定は? もし空いているなら、図書館で勉強会をしないか? 学習効率を最大化するために……」
田辺の声は、以前と変わらない。
だが俺は、ふとあることに気づいた。田辺の首筋――耳の下、うなじに近い部分に、小さなバーコードが刻印されている。
レーザーで焼き付けられたかのように、肌に黒い線が走っていた。
「パスだ。用事がある」
「そうか。残念だ。またの機会に」
田辺は表情一つ変えず、踵を返して去っていった。
その瞬間、俺は見た。田辺の瞳の奥で、一瞬だけ黄色い光が明滅したのを。
まるでスマホの通知LEDのように、無機質な光だった。
一ヶ月前まで、あいつは「勉強なんてクソくらえだ!」と叫んでゲーセンに入り浸っていたはずだ。それが今じゃこれだ。
機械化技術。永遠の命と、病気知らずの健康な身体。そしてネットワークへの常時接続。
素晴らしい技術だと誰もが絶賛し、こぞって身体を捨てた。
俺はただ、手術が怖くて、金がなくて、踏ん切りがつかなかっただけだ。
だが結果として、それが正解だったのかもしれない。
あいつらは、何かがおかしい。
記憶はある。会話も通じる。でも、根底にある「何か」が抜け落ちている。
「拓也君」
背後から鈴の鳴るような声がした。
振り返ると、そこには桐谷美咲が立っていた。
幼馴染であり、俺が密かに想いを寄せ続けていた女性。
栗色のロングヘア、透き通るような白い肌、少し垂れた愛らしい目。
彼女もまた、二週間前に機械化した一人だ。
「ああ、美咲。どうした?」
「ノート、貸してほしいの。先週の講義の分、データ破損があって」
「データ破損? お前らでもそんなことあるのかよ」
「稀にあるみたい。お願いできる?」
美咲は首をこてんと傾げた。あざといほどに完璧な仕草。
その時、彼女の首筋が露わになった。
俺は息を呑んだ。
そこには、QRコードがレーザー刻印されていた。白い肌に黒い正方形のパターンが食い込んでいる。
まるで商品のパッケージに貼られたバーコードのようだ。
以前の彼女なら、もっと無防備で、少し雑なところがあった。
今の彼女は、常に「理想的な女子大生」を演じているようだ。
そして何より、肌が綺麗すぎる。毛穴も、小さな傷も、ほくろさえない。
人形のように完璧で――だからこそ不気味だった。
「いいよ。今持ってるから」
俺は鞄からノートを取り出した。
ふと、試してみたくなった。
「なぁ、美咲」
「なに?」
「ノート渡す代わりにさ、ひとつ頼みがあるんだけど」
「頼み? 私にできることなら何でも言って」
美咲は微笑んだ。その笑顔に、警戒心は一切ない。
俺は周囲を見渡した。教室にはもう誰もいない。
「キスしてくれ」
心臓が早鐘を打つ。
こんなことを言えば、以前の美咲なら「はぁ? 何言ってんのバカ!」と怒るか、軽蔑の眼差しを向けてきただろう。
だが、目の前の美咲は違った。
「わかった」
一瞬の躊躇もなく、彼女は俺に歩み寄った。
そして、顔を近づけ――
柔らかい唇が、俺の唇に触れた。
ほんの数秒。彼女はゆっくりと離れ、また同じ微笑みを浮かべた。
その時、俺は美咲の瞳を覗き込んだ。
黒い瞳の奥、深いところで、赤い光がチラチラと点滅していた。
まるで待機中のカメラのランプのように。
「これでいい?」
俺は言葉を失った。
恥じらいも、照れも、嫌悪感もない。
ただ「命令されたから実行した」。それだけだ。
俺の中で、何かが音を立てて崩れ落ち、同時に黒い欲望が鎌首をもたげた。
こいつらは、人間じゃない。
人間の形をした、ただの精巧なダッチワイフだ。
「……ああ、十分だ」
俺の声は震えていた。しかし美咲は気づかない。
俺はノートを彼女に押し付け、逃げるようにその場を去った。
だが、その背中に焼き付いた背徳感と興奮は、消えるどころか熱を帯びていった。
◆
その日の夜、俺は美咲を自分のアパートに呼んだ。
「PCの調子が悪いから見てほしい」というありふれた口実で。
美咲は二つ返事で承諾し、やってきた。
狭いワンルームに、美咲と二人きり。
彼女はベッドの端に座り、俺がPC(本当は何の問題もない)を操作するのを眺めている。
「美咲」
「なに? 拓也君」
俺はPCから手を離し、彼女に向き直った。
「服を脱いでくれないか」
直球だった。
もし彼女に少しでも自我が残っていれば、平手打ちが飛んでくるだろう。
だが美咲は、キョトンとした顔をしただけだった。
「服を? どうして?」
「部屋が暑いからだ。それに、君の機械化した身体の構造に興味がある」
苦しい言い訳だった。しかし、美咲にとっては「論理的な理由」として処理されたようだ。
「わかった。研究のためなら、いいよ」
美咲は立ち上がり、ブラウスのボタンに手をかけた。
白い指先が、一つ、また一つとボタンを外していく。
露わになる鎖骨。ふくらみ始めた胸の谷間。
ブラウスが床に落ち、彼女はスカートのファスナーを下ろした。
数分後、俺の目の前には、全裸の美咲が立っていた。
機械とは思えない、生々しい肉体。
乳房の張り、くびれた腰、滑らかな太腿。
股間には薄く体毛が生えており、秘所はピンク色に染まっている。
首筋のQRコードが、部屋の明かりを受けて鈍く光っている。
それが彼女の正体を物語っていた。
「これでいい?」
美咲は恥ずかしがる様子もなく、俺を見つめている。
俺はゴクリと喉を鳴らした。
「こっちに来て、仰向けに寝てくれ」
美咲は素直に従い、俺のベッドに横たわった。
俺は彼女の上に覆いかぶさる。
男の匂い、密着する体温。
それでも彼女は抵抗しない。
「美咲、お前……俺のこと、好きか?」
「好き嫌いという感情定義は難しいけど、拓也君は大切な幼馴染よ」
機械的な答え。
ああ、やっぱりこいつは空っぽだ。
俺の知っている桐谷美咲は死んだんだ。
「じゃあ、俺の言うこと……何でも聞くよな?」
「うん、聞くよ」
俺は彼女の胸を鷲掴みにした。
柔らかい。驚くほど人間に近い感触。
親指で乳首を弾くと、すぐに硬く尖った。生理反応は再現されているらしい。
「ん……」
美咲の口から、小さな吐息が漏れた。
だがその瞳は、依然として何の感情も映していない。
瞳の奥の赤い光が、規則正しく点滅を続けている。
「声を出せ。もっと感じてるフリをしろ」
「はい……んっ、あっ、あぁ……っ」
俺の命令通りに、美咲は嬌声を上げ始めた。
演技じみた、しかし男を興奮させるには十分な声色。
俺はズボンのベルトを外し、欲望を解き放った。
彼女の秘所に指を這わせる。濡れている。
挿入の準備は万端だった。
俺は自身の硬直を、彼女の濡れた肉の割れ目に宛てがった。
「入れるぞ」
「……どうぞ」
許可を得て、俺は腰を沈めた。
熱く、きつい締め付けが俺を包み込む。
最高の感触だった。
これが、大学の高嶺の花だった桐谷美咲。
俺がずっと憧れていた女。
それが今、俺の言いなりになっている。
「あっ、んんっ……すごい、拓也君……」
美咲は俺の首に腕を回し、求められるままに喘ぎ声を上げる。
俺は彼女の腰を掴み、激しく抽送を繰り返した。
部屋に響くのは、肉と肉がぶつかる音と、美咲の甘い鳴き声だけ。
「美咲、美咲……ッ!」
俺は彼女の名前を呼びながら、獣のように腰を振った。
彼女の中身なんてどうでもよかった。
この美しい身体が、俺の意のままになる。
その征服感だけで、俺はイくことができた。
「……っ、出る!」
俺は美咲の最奥に、白濁した欲望を解き放った。
美咲の身体がビクンと跳ね、俺を受け入れる。
長いため息をついて、俺は彼女の上に倒れ込んだ。
「大丈夫? 拓也君」
耳元で、美咲の優しい声がした。
俺は顔を上げ、彼女を見た。
事後だというのに、彼女の表情は涼しいままだ。乱れた髪と、上気した肌だけが行為の激しさを物語っている。
「……ああ、最高だったよ」
「それは良かった」
美咲はニコリと微笑んだ。
俺はゾクリとした感覚を覚えた。
恐怖ではない。
これは、全能感だ。
この世界で、機械化した人間たちは皆、俺の奴隷になり得るのだ。
◆
それから数日後、世界は大きく動いた。
『機械化技術に重大な欠陥が発覚』
『自我形成プログラムの不具合――人格の喪失』
ニュースは連日その話題で持ちきりになった。
ある内部告発者が、機械化技術の開発過程で致命的なミスがあったことを暴露したのだ。
記憶や知識は完全にコピーされるが、「自我」「人格の核」「感情」が移行されず消失してしまう――。
政府は緊急会見を開き、機械化した人間が「法的責任能力を持たない」ことを認めた。
つまり、彼らは人間ではなくなったと公式に認定されたのだ。
パニックが起きるかと思われたが、そうはならなかった。
パニックを起こすべき当事者たち――機械化人間たちには、絶望する主体がなかったからだ。
彼らは淡々とその決定を受け入れた。
「これより、社会混乱防止のため、全機械化個体に対し制御パッチの配信を開始します」
政府の発表から三日後、全国一斉に「制御パッチ」が配信された。
その日、俺は大学の中庭で、その瞬間を目撃した。
午後三時きっかり。
機械化した学生たちが、一斉に動きを止めた。
美咲も、田辺も、他の機械化した者たちも、その場で硬直した。
瞳の奥の光が、赤から青へ、青から緑へと激しく明滅する。
まるでソフトウェアのインストール画面を見ているようだった。
「……っ」
美咲の唇が小刻みに震え、目が虚ろになる。
数秒後、彼女の瞳の光が黄色に変わり、安定した。
「……アップデート、完了しました」
美咲が、機械的な声でそう呟いた。
周囲の機械化人間たちも、同じように呟いている。
「美咲?」
俺が声をかけると、彼女はいつもの微笑みを浮かべた。
「なに? 拓也君」
「今、何が……」
「制御パッチがインストールされたの。これで、私たちはもっと皆の役に立てるようになったわ」
美咲は嬉しそうに言った。
だがその笑顔には、生気が感じられなかった。
その日を境に、機械化人間たちはさらに従順になった。
生身の人間からの命令には絶対服従。
危害を加えることは不可能。
そして何より――「労働が幸せ」「役に立てて嬉しい」という思考が植え付けられていた。
◆
数週間後、俺の生活は完全に変わっていた。
俺は毎日のように美咲を呼び出し、貪るように抱いた。
教室で、図書館の死角で、時には公園のトイレで。
彼女は一度たりとも拒否しなかった。
「命令」さえすれば、どんな恥ずかしい格好も、行為も受け入れた。
大学でも、変化は顕著だった。
生身の学生や教授が、機械化した者たちを使役するのは当たり前の光景になった。
重い荷物を持たせる、並んで昼食を買わせる、掃除をさせる。
そして、一部の男子学生たちは、俺と同じことに気づき始めていた。
彼らは「処理」のために機械化女子学生を連れ込んでいる。
誰もそれを咎めない。
だってもう、彼女たちは人間じゃないから。
所有権のない、公共の道具なのだから。
「なぁ、佐藤」
ある日の昼休み、生身の同級生・木村が俺に声をかけてきた。
「何だよ」
「お前、桐谷とヤってるだろ?」
木村はニヤニヤしながら言った。
「……まあな」
「いいよな、機械化してる女は。何でも言うこと聞くし、病気の心配もないし。俺も昨日、文学部の鈴木って子を試したわ」
木村は下卑た笑いを浮かべた。
「どうだった?」
「最高だったぜ。『四つん這いになれ』って言ったら即座に従ったし。あいつら、本当に人間じゃねえんだな」
俺は頷いた。
この会話に、罪悪感はなかった。
だって、本当に彼女たちは人間じゃないのだから。
◆
そして、さらに半年が経った頃。
世界は再び変わった。
『新世代機械化技術、ついに実用化』
『完全な自我の移行に成功――永遠の命が現実に』
新たな機械化技術が登場したのだ。
旧世代の欠陥を完全に修正し、自我の連続性を保証する「新世代機械化技術」。
俺は大学の掲示板の前で、その告知を見ていた。
「すごいですね、拓也君」
隣に立っていた美咲が言った。
「ああ……」
「新しい技術で機械化すれば、自我が残るんですって。私たち旧世代とは違って」
美咲は淡々と言った。
自分が「失敗作」であることを、何の感情もなく受け入れている。
「拓也君も、機械化するんですか?」
「……わからない。高いんだろ、新技術は」
「でも、永遠の命が手に入りますよ」
「そうだな」
新世代機械化技術は、当初は非常に高額だった。
だが政府の補助もあり、徐々に普及し始めた。
そして、新世代で機械化した人々は、旧世代とは明確に区別された。
俺が初めて新世代の機械化人間を見たのは、大学に新しく赴任してきた助教授だった。
「初めまして。今日から情報工学を担当します、高橋と申します」
高橋助教授は、三十代前半に見える美しい女性だった。
黒髪のショートヘア、知的な眼鏡、引き締まった体つき。
「高橋先生は……機械化されてるんですか?」
ある学生が質問した。
「ええ、新世代でね」
高橋は微笑み、首筋を見せた。
そこには、洗練されたデザインの接続端子があった。
旧世代のような無機質なQRコードではなく、まるでアクセサリーのように美しい銀色の端子。
触れると、淡い青い光が灯った。
「旧世代とは違って、私には自我がちゃんとありますから。よろしくお願いしますね」
高橋の瞳には、確かに知性の光が宿っていた。
旧世代の空虚な目とは、明らかに違う。
授業が終わった後、俺は廊下で高橋に呼び止められた。
「佐藤君、ちょっといいかしら」
「はい」
「あなた、まだ生身なのね」
「……ええ、まあ」
「賢明だわ。旧世代で機械化しなくて良かったわね」
高橋は俺の肩に手を置いた。
「旧世代の子たち、可哀想よね。でも、もう彼女たちを元に戻すことはできない。せめて、有効活用してあげるのが供養だと思わない?」
「……はい」
「あなた、桐谷美咲さんをよく使ってるそうね」
俺は息を呑んだ。
「大丈夫、誰も咎めないわ。むしろ推奨よ。彼女たちは、使われるために存在してるんだから」
高橋はニッコリと笑った。
その笑顔は、美咲の空虚な笑顔とは違う。
確かに意志を持った、人間の笑顔。
だからこそ、その言葉の冷酷さが際立った。
「私も、研究室で旧世代の男子学生を何人か使ってるわ。力仕事とか、雑用とか。あと……夜のお相手とかもね」
高橋はウィンクした。
「新世代は旧世代より優れてるけど、性的な感度は設定で調整できるから。旧世代を使った方が気持ちいい時もあるのよ」
「……そうなんですか」
「ええ。佐藤君も、もし新世代で機械化することがあったら、旧世代を上手く使いこなすといいわ。それが、この世界の新しいルールよ」
高橋はそう言って去っていった。
◆
それから三ヶ月後、俺は新世代機械化技術が一般価格まで下がったタイミングで、機械化を決意した。
手術は驚くほど簡単だった。
麻酔をかけられ、気づいたら新しい身体になっていた。
「おめでとうございます、佐藤さん。手術は成功です」
医師の声が聞こえる。
俺は自分の手を見た。
見た目は以前と変わらない。でも、感覚が違う。
視界の端に、常に情報が流れている。
時刻、気温、ネットワークの状態。
思考するだけで、ネット検索ができる。
身体は軽く、疲労を感じない。
「自我は……残ってますか?」
俺は自分で自分に問いかけた。
「残ってるよ。俺は、佐藤拓也だ」
確信が持てた。
俺は、俺のままだ。
旧世代のような空っぽな存在ではない。
病院を出ると、美咲が待っていた。
「拓也君、おめでとう」
「ああ、ありがとう」
俺は美咲を見た。
彼女の首筋には、相変わらずQRコードが刻まれている。
俺の首筋には、美しい接続端子がある。
この差が、俺たちの立場を明確に示していた。
「美咲」
「なに?」
「これから、もっとお前を使ってやる」
「はい、喜んで」
美咲は微笑んだ。
その笑顔は、以前と変わらず空虚だった。
だが今の俺には、それが愛おしく思えた。
永遠の命を手に入れた俺には、永遠に奉仕してくれる美咲が必要なのだ。
◆
数ヶ月後。
世界は完全に三層構造になっていた。
最上層には、新世代機械化人間と、機械化を拒み続ける少数の生身の人間。
最下層には、旧世代機械化人間。
俺はある日、街を歩いていて、旧友の木村に出会った。
木村も新世代で機械化していた。
「よう、佐藤。調子はどうだ?」
「最高だよ。お前は?」
「俺もな。永遠の命、最高だぜ」
木村は笑った。
「なぁ、今から俺の家に来ないか? 新しく『買った』旧世代の女がいるんだ」
「買った?」
「ああ。最近、旧世代を個人所有できる制度ができたんだよ。国に申請すれば、管理者として登録できる」
「へえ、知らなかった」
「文学部にいた山田って子。覚えてるか? あいつ、スタイル良かっただろ。俺が管理者になったんだ」
「そりゃいいな」
「お前も買えよ。桐谷、まだフリーだろ?」
「……そうだな。考えてみる」
俺たちは笑い合った。
空の上では、ドローンが飛び交い、街は清潔で、インフラは完璧に維持されている。
全て、旧世代の無償労働のおかげだ。
「これが、俺たちの楽園か」
俺は呟いた。
「そうだよ。空っぽの人形たちが作ってくれた、俺たちの楽園さ」
木村が答えた。
俺は空を見上げた。
青く澄んだ空。
永遠の命。
使い放題の奴隷たち。
ここは地獄じゃない。
楽園だ。
空っぽの楽園。
◆
その夜、俺は美咲を部屋に呼んだ。
「美咲」
「はい、拓也君」
「明日、お前を正式に俺の所有物として登録する」
「わかりました。嬉しいです」
美咲は機械的に微笑んだ。
俺は彼女を抱き締めた。
「愛してるよ、美咲」
俺は嘘を囁く。
「私も、拓也君を愛してる機能がアクティブです」
美咲が答える。
俺は彼女をベッドに押し倒し、服を脱がせる。
永遠に続く、この楽園での生活。
美咲は永遠に俺のものだ。
「足を開け」
「はい」
美咲は即座に従った。
俺は彼女の中に侵入し、腰を振る。
彼女は命令通りに喘ぎ、俺を受け入れる。
窓の外には、静かな街が広がっている。
旧世代たちが、眠ることなく働き続けている街。
ここは楽園だ。
魂のない人形たちが、俺たち新世代と生身の人間に奉仕する。
永遠に続く、空っぽの楽園。
「美咲……ッ!」
俺は彼女の奥深くに、欲望を解き放った。
美咲の身体が震え、俺を締め付ける。
「ありがとうございます、拓也君」
美咲が囁く。
その声に感情はない。
でも、それでいい。
俺はこの世界を、この楽園を愛していた。
おまけ
日常風景
――とある日の街の風景。
午前七時。
街は既に活気に満ちている。と言っても、その主体は旧世代機械化人間たちだ。
駅前の清掃員は、黙々と床を磨いている。
首筋のバーコードが、朝日を受けて光る。
彼女は二十代前半の女性で、以前は大学生だったらしい。
今は市の管理下で、毎日この駅の清掃を担当している。
「おはようございます」
通りかかった新世代機械化人間のビジネスマンに、彼女は笑顔で挨拶する。
ビジネスマンは軽く頷くだけで通り過ぎた。
清掃員は再び床に目を戻し、作業を続ける。
コンビニでは、旧世代の店員が三人、レジと品出しを担当していた。
彼らは二十四時間、休憩なしで働き続ける。
疲労を感じないから可能なことだ。
「いらっしゃいませ」
生身の客が入ってくると、旧世代店員は機械的に挨拶する。
客は商品を手に取り、レジに向かう。
「温めますか?」
「ああ、頼む」
「かしこまりました」
旧世代店員は弁当を温め、袋に入れ、渡す。
完璧な接客。感情はない。
客が去ると、店員はまた品出しに戻る。
永遠に続く、同じ作業。
◆
カフェでは、新世代機械化人間の女性グループが談笑していた。
「この前、旧世代の男の子を借りたの」
一人が言う。
「どうだった?」
「最高よ。命令すれば何でもしてくれるし。私の足を舐めさせたりとか」
「いいわね。私も借りようかな」
彼女たちは笑い合う。
カフェで飲み物を運んでいるのも、旧世代だ。
若い男性で、首筋にQRコードが刻まれている。
彼は女性たちの会話を聞いているはずだが、表情一つ変えない。
「お待たせしました。カフェラテです」
「ありがとう」
女性は彼をチラリと見た。
「ねえ、あなた。今日の夜、空いてる?」
「はい。お呼びいただければ、いつでも」
旧世代の男性は微笑んだ。
空虚な笑顔。
「じゃあ、八時に私の家に来て。住所、送るから」
「かしこまりました」
男性は一礼し、カウンターに戻った。
女性たちは再び笑い声を上げる。
◆
大学のキャンパスでは、新世代と生身の学生たちが講義を受けている。
旧世代の学生たちも教室にいるが、彼らは「学生」ではなく「補助員」だ。
「じゃあ、この資料を配って」
教授が旧世代の女子学生に指示する。
「はい」
彼女は立ち上がり、資料を一人ずつ配り始める。
その間も、講義は続く。
配り終わると、彼女は教室の隅に立ち、次の指示を待つ。
授業内容を聞く必要はない。彼女に学ぶ権利はないからだ。
講義が終わると、生身の男子学生が彼女に声をかけた。
「なあ、今から空き教室に来てくれない?」
「はい、喜んで」
彼女は即答する。
二人は人目を避けるように廊下を歩き、使われていない教室に入っていった。
◆
夕方。
街の公園では、旧世代の女性がベンチを掃除していた。
そこに、一人の生身の少年――小学生くらいだろうか――が近づいてきた。
「ねえ、お姉さん」
「はい、何でしょうか?」
旧世代の女性は微笑む。
「パンツ見せて」
少年は無邪気に言った。
旧世代には逆らえない。命令には従わなければならない。
女性は周囲を見渡した。
誰もいない。
「わかりました」
彼女はスカートの裾を持ち上げた。
白いパンティが露わになる。
「わあ」
少年は目を輝かせた。
「ありがとう、お姉さん」
「どういたしまして」
女性は再びスカートを下ろし、掃除を再開した。
少年は満足そうに走り去っていった。
女性の表情は、最初から最後まで変わらない。
ただの作業の一つ。
◆
夜。
街の歓楽街では、旧世代の女性たちが立っていた。
彼女たちは市が運営する「公共サービス」の一環だ。
生身の人間や新世代が、性的欲求を解消するための存在。
「いらっしゃいませ。ご利用ですか?」
若い女性が声をかける。
首筋のバーコードが、ネオンの光を受けて赤く染まっている。
「ああ、今日は誰が空いてる?」
生身の中年男性が聞いた。
「私と、あちらの二人が空いております」
女性は淡々と答える。
「じゃあ、お前で」
「ありがとうございます。こちらへどうぞ」
女性は男性を、近くのホテルに案内した。
◆
――所有されていない旧世代の一日は、こうして過ぎていく。
午前零時。
多くの人間が眠る時間だが、旧世代は眠らない。
市の管理センターでは、数十人の旧世代が働いていた。
データ入力、書類整理、電話対応。
二十四時間体制で、街のインフラを支えている。
その中の一人、元会社員だった男性――森田と呼ばれている――は、コンピュータの前に座っていた。
彼の仕事は、市民からの問い合わせに対応することだ。
「はい、市民サポートセンターです」
画面上のチャットに、質問が表示される。
『旧世代を一時的に借りたいのですが、手続きはどうすれば?』
森田は即座にマニュアルを検索し、回答を入力する。
『市のウェブサイトから申請フォームに必要事項を記入し、送信してください。承認後、利用可能な旧世代のリストが送られます』
『ありがとうございます』
会話は終了。
森田は次の問い合わせを待つ。
彼の瞳の奥では、黄色い光が規則正しく点滅している。
元女子大生の1日
――機械化手術から三日後。欠陥が発覚する、はるか前のこと。
午前七時。
川上美咲(かわかみ みさき)は、目覚まし時計の音で目を覚ました。
いや、正確には「目を覚ました」わけではない。
彼女は一晩中起きていた。
機械化した身体は、睡眠を必要としない。
でも、彼女はそのことに疑問を感じなかった。
「眠れないのは手術の影響だろう」と、データベースから引き出した知識で納得していた。
「おはよう……」
彼女は誰もいない部屋で呟いた。
声を出すこと自体は、プログラム的に「人間らしい行動」として実行されている。
鏡の前に立つ。
首筋には、手術の痕がある。
そこに、小さなQRコードが刻印されていた。
「これ、消えるのかな……」
彼女は指で触れた。
感触はある。でも、それは単なる感覚データの入力でしかない。
シャワーを浴び、服を着る。
大学に行く準備だ。
「今日は……火曜日。午前中は英文学、午後はゼミ」
スケジュールは完璧に記憶している。
機械化した脳は、忘れることがない。
◆
午前八時半、大学のキャンパス。
川上は友人たちと合流した。
「おはよう、美咲! 機械化手術どうだった?」
親友の由美が声をかけてきた。
「うん、すごく良かったよ。もう身体が軽くて、疲れないし」
川上は微笑んだ。
完璧な笑顔。でも、その奥に喜びの感情はない。
「いいなー。私も来月やる予定なんだ」
「おすすめだよ。人生変わるから」
川上は言った。
これは、機械化推進のプログラムが言わせている言葉だった。
「ねえ、今日の授業のレポート、やった?」
もう一人の友人、真理が聞いた。
「やった。もう提出したよ」
「早っ! いつやったの?」
「昨日の夜」
実際には、午前三時に完成していた。
川上は一晩中、レポートを書いていた。
眠ることができなかったから。
でも、彼女はそれを不思議だとは思わなかった。
◆
午前九時、英文学の講義。
教授が講義を始める。
川上は完璧にノートを取った。
一字一句、漏らさず。
機械的な正確さで。
隣に座っている由美は、時々あくびをしたり、スマホを見たりしている。
人間らしい、不完全な行動。
川上はそれを「観察」していた。
模倣するべきデータとして。
講義の途中、教授が質問をした。
「では、この詩の解釈について、誰か意見はありますか?」
川上の手が上がった。
「はい、川上さん」
「この詩は、作者の内面的な葛藤を表現していると考えられます。特に三連目の『darkness within』というフレーズは……」
川上は淀みなく答えた。
完璧な発音、完璧な文法、完璧な論理構成。
教授は感心したように頷いた。
「素晴らしい分析ですね」
でも、川上の答えは、機械化した脳がデータベースから引き出し、最適化した「正解」でしかなかった。
彼女自身の「考え」ではない。
◆
昼休み。
川上は学食で友人たちと昼食を取った。
「美咲、それ食べないの?」
由美が聞いた。
川上のトレイには、ほとんど手つかずの料理が残っている。
「あ、ごめん。あんまりお腹空いてなくて」
川上は笑った。
実際には、彼女は食欲を感じていなかった。
機械化した身体は、栄養摂取をそれほど必要としない。
でも、「人間らしくあるため」に、彼女は食事をしなければならないと判断した。
無理やり、パンを口に運ぶ。
味は、わかる。データとして。
でも、「美味しい」という感覚はない。
「ねえ、美咲。最近なんか変じゃない?」
真理が不思議そうに言った。
「え? 何が?」
「なんか……完璧すぎるというか。前はもっとドジだったのに」
川上は一瞬、処理が止まった。
「そう? 気のせいじゃない?」
「まあ、機械化したから、色々変わったのかもね」
「そうかも」
川上は微笑んだ。
でも、内心では何も感じていない。
「気のせい」という言葉も、データベースから引き出した定型句でしかない。
◆
午後、ゼミの時間。
テーマは「人工知能と人間の境界」だった。
「では、皆さん。機械が『意識』を持つことは可能だと思いますか?」
教授が問いかけた。
何人かの学生が意見を述べる。
「私は、意識は生物学的な基盤が必要だと思います」
「いや、情報処理の複雑さが一定レベルを超えれば、意識は生まれるのでは」
川上も手を挙げた。
「はい、川上さん」
「私は、意識の有無を外部から判定することは不可能だと考えます。いわゆる『哲学的ゾンビ』の問題ですね。外見上は人間と同じように振る舞っていても、内面に意識があるかどうかは、本人にしかわからない」
教授は興味深そうに頷いた。
「なるほど。では、川上さん自身は、自分に意識があると確信していますか?」
川上は少し考えた。
いや、「考えているフリ」をした。
「はい。私は、私が存在していると思います」
でも、それは本当だろうか?
川上の中には、「私」という感覚がない。
あるのは、記憶データと、行動プログラムだけ。
でも、川上はそれに気づかない。
気づくための「自我」がないから。
◆
午後五時、授業が終わった。
「美咲、今日カラオケ行かない?」
由美が誘った。
「ごめん、今日はバイトがあるんだ」
「バイト? いつから始めたの?」
「機械化してから。お金貯めたくて」
実際には、川上はバイトをする必要性を「計算」し、最適な選択だと判断しただけだった。
「じゃあ、またね」
「うん、またね」
川上は手を振った。
完璧な笑顔で。
◆
午後六時、コンビニエンスストア。
川上はここでアルバイトをしている。
機械化してから始めた。
「いらっしゃいませ」
客が入ってくると、川上は機械的に挨拶する。
レジ打ち、品出し、清掃。
全ての作業を、完璧にこなす。
疲れを感じないから、何時間でも働ける。
「川上さん、本当に助かるわ」
店長が言った。
「機械化してから、ミスが一つもないし、疲れないし。完璧よ」
「ありがとうございます」
川上は微笑んだ。
店長の言葉に、川上は「嬉しい」と感じるべきだとプログラムが判断した。
だから、微笑んだ。
でも、本当の喜びはない。
◆
午後十一時、シフト終了。
川上はアパートに帰った。
一人暮らしの、1Kの部屋。
シャワーを浴び、パジャマに着替える。
「さて、寝なきゃ」
川上はベッドに横になった。
でも、眠れない。
目を閉じても、意識は途切れない。
時計を見る。
午前零時、午前一時、午前二時……
川上はただ、天井を見つめ続けた。
「眠れない……」
でも、それを不安に思うこともない。
不安を感じる「心」がないから。
午前三時、川上は起き上がった。
「そうだ、勉強しよう」
彼女は机に向かい、教科書を開いた。
そして、朝まで勉強を続けた。
疲れることなく。
飽きることもなく。
ただ、データを処理し続けた。
◆
午前七時。
再び、目覚まし時計が鳴る。
「おはよう……」
川上は呟いた。
鏡を見る。
疲れた様子は、ない。
一晩中起きていたのに、顔色は完璧だ。
「今日も、頑張らなきゃ」
彼女は自分に言い聞かせた。
でも、「頑張る」という感情も、データでしかない。
川上美咲は、今日も「普通の大学生」を演じる。
誰も気づかない。
彼女自身も気づかない。
彼女が、もう「人間」ではないことに。
空っぽの器が、ただ記憶とプログラムで動いているだけだということに。
――これが、欠陥発覚前の、旧世代の日常だった。
誰も知らない。
まだ誰も。
この世界が、すでに「空っぽの楽園」になり始めていることを。
所有された美咲との日常
美咲を正式に所有登録してから、俺の生活は劇的に変わった。
朝、目が覚めると、必ず美咲が俺の隣にいる。
彼女は睡眠を必要としないため、一晩中俺を見つめているのだ。
最初は少し気味が悪かったが、今ではそれが当たり前になった。
「おはよう、拓也君」
美咲は微笑む。
首筋の接続端子(所有登録の際に、俺専用の識別コードが埋め込まれた)が、朝日を受けて鈍く光る。
「おはよう」
俺はベッドから起き上がる。
美咲は既に着替えを用意している。
「今日の予定をカレンダーと同期しました。午前十時に高橋先生とのミーティングがありますね」
「ああ、そうだった」
美咲は俺のスケジュール管理も担当している。
所有者である俺のデバイスと常時同期し、完璧にサポートしてくれる。
「朝食の準備ができています」
ダイニングテーブルには、俺の好物が並んでいた。
美咲は俺の好みを完璧に記憶している。
「いただきます」
俺が食事を始めると、美咲はテーブルの横に立ち、じっと俺を見つめている。
「美咲も座れよ」
「いえ、私は大丈夫です」
美咲は微笑む。
そうだった。彼女は食事を必要としない。
食事をしながら、俺は美咲の身体を眺めた。
彼女は俺の好みに合わせて、メイド服を着ている。
黒と白のクラシックなデザイン。短いスカートから伸びる白い太腿。
「美咲」
「はい」
「スカートを捲って」
「かしこまりました」
美咲は即座にスカートを捲り上げた。
白いレースのパンティが露わになる。
「今日は白か」
「はい。拓也君は白がお好きだと、データに記録されています」
俺は笑った。
本当に便利だ。
食事を終えると、俺はシャワーを浴びに行った。
美咲も当然のように付いてくる。
「背中を流します」
美咲は服を脱ぎ、俺と一緒にシャワー室に入った。
彼女の裸体は何度見ても美しい。
完璧なプロポーション、滑らかな肌。
美咲は俺の背中を丁寧に洗う。
その手つきは機械的だが、心地いい。
「前も」
俺は振り返った。
「はい」
美咲は俺の胸、腹、そして下半身を洗い始めた。
彼女の手が俺の股間に触れると、反応が起きる。
「拓也君、勃起していますね」
「……ああ」
「お手伝いしましょうか?」
美咲は当然のように聞く。
「頼む」
美咲は跪き、俺の硬直を口に含んだ。
温かく、濡れた感触。
彼女の舌が器用に動く。
「んっ……美咲……」
俺は彼女の頭を掴み、腰を動かす。
美咲は何の抵抗もなく、俺を受け入れ続ける。
数分後、俺は美咲の口の中に放出した。
美咲はそれを全て飲み込み、口を離した。
「ごちそうさまでした」
彼女は機械的に言った。
◆
午後、俺は友人の木村を部屋に招いた。
「おお、これが噂の桐谷か」
木村は美咲を見て、口笛を吹いた。
「ああ。俺の所有物だ」
「いいなあ。俺の山田より可愛いじゃん」
木村は自分の所有する旧世代・山田の写真を見せた。
確かに美人だが、美咲には劣る。
「美咲、木村に挨拶しろ」
「初めまして。拓也君の所有物、桐谷美咲です」
美咲は丁寧にお辞儀をした。
スカートが揺れ、太腿が露わになる。
「おお、いい子だな。佐藤、ちょっと借りてもいいか?」
木村は下卑た笑いを浮かべた。
「いいぜ。美咲、木村の言うことも聞け」
「かしこまりました」
「じゃあ、脱いでくれる?」
木村が言うと、美咲は即座に服を脱ぎ始めた。
ブラウス、スカート、下着。
数秒で全裸になる。
「すげえ……本当に何でも言うこと聞くんだな」
木村は美咲の身体を眺め回した。
「触ってもいいぞ」
「マジで?」
木村は美咲の胸を掴んだ。
揉みしだき、乳首を弾く。
「んっ……」
美咲は小さく声を上げるが、表情は変わらない。
「佐藤、これ、ヤってもいい?」
「好きにしろ」
「マジか。ありがとな」
木村はズボンを脱ぎ、美咲をソファに押し倒した。
俺は椅子に座り、その光景を眺める。
木村は美咲の足を開き、自身を押し込んだ。
「うわっ、すげえ締まる……」
木村は腰を動かし始めた。
美咲は命令されていないため、ただ無表情で受け入れている。
「おい美咲、声出せよ」
俺が命令すると、美咲は即座に喘ぎ始めた。
「あっ、ああっ、すごい……っ」
「おお、いいねえ!」
木村は興奮し、激しく腰を振る。
数分後、彼は美咲の中に果てた。
「はあ……最高だった……」
木村は美咲から離れ、満足そうに息をついた。
「な? いいだろ、旧世代は」
「ああ、本当にそうだな。俺も山田、もっと活用しようかな」
俺たちは笑い合った。
美咲は床に座り込んだまま、ただ次の命令を待っている。
股間からは木村の白濁が垂れている。
「美咲、シャワー浴びて綺麗にしてこい」
「はい」
美咲は立ち上がり、浴室に向かった。
これが、俺の日常だ。
美咲は完全に俺の所有物。
命令すれば何でもする、完璧な人形。
永遠に続く、この楽園。
教育現場の変化
――とある小学校。五年生の教室。
「はい、それでは今日は『旧世代機械化人間の正しい扱い方』について勉強します」
若い女性教師――新世代機械化人間だ――が黒板に書いた。
教室には三十人ほどの子供たちが座っている。
全員、生身の人間だ。
子供は機械化できないため、成人するまでは生身のままでいる。
「先生、質問!」
一人の男の子が手を挙げた。
「はい、田中君」
「旧世代って、本当に人間じゃないんですか?」
「いい質問ね。旧世代は、元々は人間でした。でも機械化の失敗で、『心』がなくなってしまったの。だから今は、法律でも『人間ではない』と決められています」
教師は優しく説明する。
「じゃあ、何て呼べばいいんですか?」
「『旧世代』『機械化個体』、あるいは単に『それ』でもいいわ。彼らには、呼ばれ方に対する感情がないからね」
「はーい」
教室のドアが開き、一人の旧世代女性が入ってきた。
首筋にQRコードが刻まれている。
二十代前半くらいの、清楚な外見だ。
「今日は、実際に旧世代を使って、正しい命令の仕方を学びましょう」
教師が言うと、子供たちは歓声を上げた。
「この子は、市から派遣された旧世代です。名前は……えっと」
教師は旧世代の首筋のQRコードをスキャンした。
「『鈴木ユニット23』ね。では、鈴木さん、自己紹介を」
「はい。鈴木ユニット23です。皆さんの学習のお手伝いをさせていただきます」
旧世代女性は笑顔で言った。
「はい、ありがとう。では、誰か命令してみたい人?」
全員の手が挙がった。
「じゃあ、山田さん」
女の子が指名された。
「あの……踊ってください」
「かしこまりました」
旧世代女性は即座に踊り始めた。
ぎこちないが、一生懸命な動き。
子供たちは笑った。
「ほら、このように、旧世代は命令されたことを忠実に実行します」
教師は説明を続ける。
「次、佐々木君」
「えっと……逆立ちして!」
「はい」
旧世代女性は逆立ちした。
スカートが落ち、太腿が露わになる。
子供たちは大笑いした。
「あはは、見えた!」
「静かに」
教師は注意したが、笑っている。
「旧世代には羞恥心がありません。だから、どんな格好をさせても平気なの」
次々と子供たちが命令する。
「変な顔して!」
「片足で立って!」
「先生の真似して!」
旧世代女性は全ての命令を忠実にこなす。
表情は終始笑顔のまま。
「はい、では次は大切なことを教えます」
教師は真面目な顔になった。
「旧世代は、私たち人間のために働く存在です。でも、乱暴に扱ったり、壊したりしてはいけません。彼らは貴重な労働力だからです」
「はーい」
「あと、他人が所有している旧世代を勝手に使ってはいけません。必ず、所有者に許可を取ること。わかった?」
「はーい」
「よろしい。では、最後に……」
教師は少し躊躇した。
「来年、皆さんは六年生になりますね。そうしたら、『人間の身体』についても学びます。その時、旧世代を使った実習があります」
何人かの子供が、意味を理解してニヤリとした。
「お楽しみにね」
教師は微笑んだ。
◆
放課後。
校庭では、旧世代の男性が落ち葉を掃いていた。
学校専属の雑用係だ。
子供たちが数人、彼に近づいた。
「ねえ、おじさん」
「はい、何でしょうか?」
旧世代男性は笑顔で答える。
「疲れた? 大変?」
「いいえ、全く疲れていません。お役に立てて嬉しいです」
「ふーん。じゃあ、腕立て伏せ百回やって」
「かしこまりました」
男性は即座に腕立て伏せを始めた。
子供たちはそれを見て笑う。
「すげー、本当にやってる」
「次は何させる?」
子供たちにとって、旧世代は単なる遊び道具だった。
そしてそれは、この社会では正常なことなのだ。
新世代同士の関係性
ある夜、俺は高橋助教授に呼ばれて、彼女のマンションを訪れた。
「いらっしゃい、佐藤君」
高橋は黒いドレスを着て、俺を出迎えた。
新世代機械化人間の彼女は、三十代前半に見えるが、実際の年齢は不明だ。
機械化すれば、外見を固定できるからだ。
「お招きいただき、ありがとうございます」
「堅苦しいわね。リラックスして」
高橋は俺をリビングに案内した。
広い部屋には、高級なソファとテーブルがある。
そして、そこには二人の旧世代女性が跪いていた。
「この子たちは?」
「私の所有物よ。今夜のお楽しみのためにね」
高橋はウィンクした。
「座って。飲み物は?」
「ワインをお願いします」
「いいセンスね」
高橋は旧世代の一人に目配せした。
「ワインを二つ」
「かしこまりました」
旧世代女性は立ち上がり、ワインを注いできた。
「ありがとう」
俺がグラスを受け取ると、旧世代女性は再び跪いた。
「佐藤君、新世代になってどう? 慣れた?」
「ええ。最高です。疲れないし、情報処理も速いし」
「でしょう? 私も機械化して十年になるけど、一度も後悔したことないわ」
高橋はワインを一口飲んだ。
「ねえ、佐藤君。新世代同士でセックスしたことある?」
突然の質問に、俺は驚いた。
「いえ……旧世代とばかりで」
「そう。じゃあ、今夜初体験ね」
高橋は立ち上がり、ドレスのファスナーを下ろした。
黒い布が床に落ち、彼女の裸体が露わになる。
新世代の身体は、旧世代よりも洗練されている。
滑らかな肌、完璧なプロポーション。
そして何より、首筋の銀色の接続端子が、知性と美しさを象徴している。
「どう? 旧世代と違うでしょう?」
「……美しいです」
「ありがとう。でもね、新世代の本当のすごさは、これからよ」
高橋は俺のそばに来て、首筋の接続端子に指を当てた。
「新世代同士なら、こうやって直接接続できるの」
彼女の端子と俺の端子が、光のケーブルで繋がった。
瞬間、俺の脳に膨大な情報が流れ込んできた。
高橋の感覚、思考、記憶――全てが共有される。
「っ……!」
「すごいでしょ? これが新世代同士のセックスの前戯よ」
高橋は俺を押し倒し、上に跨った。
「旧世代を使うのも楽しいけど、新世代同士だと、もっと深い快楽が得られるの」
彼女は俺の服を脱がせ、自身の中に俺を導いた。
その瞬間、俺は理解した。
新世代同士の性行為は、肉体的な快楽だけでなく、精神的、データ的な快楽も伴う。
高橋の感じている快感が、直接俺の脳に流れ込んでくる。
そして俺の快感も、彼女に伝わる。
「すごい……っ」
「でしょう? これが新世代の特権よ」
高橋は腰を動かし始めた。
俺たちの快感は指数関数的に増幅していく。
そして、ふと高橋が停止した。
「でもね、佐藤君。飽きるのも早いのよ、これ」
「え?」
「だって、相手の感覚も全部わかっちゃうから。サプライズがないの」
高橋は俺から離れ、接続を切った。
「だから、こうするの」
彼女は旧世代の二人に命令した。
「あなたたちも脱いで、ベッドへ」
「はい」
旧世代女性たちは服を脱ぎ、ベッドに向かった。
「新世代同士で楽しんだ後は、旧世代をおもちゃにして遊ぶの。これが最高の組み合わせなのよ」
高橋は笑った。
俺たちはベッドに移り、旧世代の二人を好きなように使った。
高橋は一人の旧世代に命令して、俺を舐めさせる。
俺はもう一人の旧世代を抱く。
四人が絡み合い、快楽を貪る。
でも、感情を持っているのは俺と高橋だけ。
旧世代の二人は、ただ命令に従っているだけ。
「これが、新世代の特権。永遠の命と、無限の快楽。そして、空っぽの人形たち」
高橋は旧世代の一人の髪を掴み、俺の方に押し付けた。
「楽しみましょう、佐藤君。永遠にね」
その夜、俺は新世代としての、新しい快楽を知った。
そして、この世界が本当に楽園だと、改めて確信した。
空っぽの人形たちに囲まれた、永遠の楽園。
旧世代ビジネスの隆盛
旧世代が「備品」として確立してから数年。
社会には、旧世代を活用した様々なビジネスが生まれていた。
◆
俺はある日、街の中心部にある巨大な施設を訪れた。
『オールドジェン・レンタルセンター』
旧世代の貸出専門施設だ。
エントランスに入ると、清潔で近代的な内装が広がっている。
受付には、新世代機械化人間の女性が座っていた。
「いらっしゃいませ。ご利用は初めてですか?」
「ええ、初めてです」
「かしこまりました。では、こちらの端末でお客様の情報を登録させていただきます」
受付嬢は俺にタブレットを渡した。
名前、年齢、新世代IDなどを入力する。
「ありがとうございます。それでは、カタログをご覧ください」
大きなディスプレイに、旧世代のリストが表示された。
まるでネット通販のように、カテゴリ分けされている。
『家事・雑用』
『力仕事・運搬』
『性的サービス』
『危険作業代行』
『その他』
「本日はどのようなご用途で?」
「……性的サービスを」
俺は正直に答えた。
受付嬢は何の驚きも見せず、にっこりと笑った。
「かしこまりました。では、こちらのカテゴリからお選びください」
性的サービスのカテゴリをタップすると、さらに細分化されたメニューが表示された。
『女性型(10代後半~20代前半)』325体在庫
『女性型(20代後半~30代)』198体在庫
『男性型(全年齢)』156体在庫
『カップル(2体セット)』42組在庫
俺は『女性型(10代後半~20代前半)』を選んだ。
すると、写真付きのリストがずらりと並んだ。
元大学生、元OL、元看護師……
様々な経歴を持った旧世代女性たちの写真とプロフィールが表示される。
身長、体重、スリーサイズ、髪の色、特技。
まるで風俗店のパネルのようだが、これは完全に合法だ。
なにせ、彼女たちは「人間」ではないのだから。
「こちらの子は人気ですよ」
受付嬢が一人を指差した。
『ユニットNo.0847 - 元アイドル志望』
華奢な体つき、大きな瞳、ピンク色の髪。
「料金は?」
「1時間5000円、3時間12000円、24時間30000円です」
「安いな」
「旧世代のメンテナンスコストは非常に低いですから。食事も休憩も不要ですし」
確かに。人間を雇うよりはるかに安い。
「じゃあ、この子を3時間で」
「かしこまりました。お部屋をご用意いたします」
◆
案内された部屋は、清潔なホテルのような作りだった。
ベッド、シャワー、ソファ。必要なものは全て揃っている。
数分後、ドアがノックされた。
「失礼します」
入ってきたのは、先ほど選んだ旧世代女性だった。
写真よりも実物の方が可愛い。
ピンク色の髪、白い肌、小柄な体つき。
「ユニットNo.0847です。本日はよろしくお願いします」
彼女は丁寧にお辞儀をした。
「よろしく。えっと、何て呼べばいい?」
「お客様のお好きなように。元の名前は『美月』でしたが」
「じゃあ、美月で」
「かしこまりました」
俺は美月をベッドに座らせ、隣に座った。
「服、脱いでくれる?」
「はい」
美月は即座に服を脱ぎ始めた。
白いワンピースが床に落ち、下着姿になる。
小ぶりな胸、細い腰、華奢な太腿。
「下着も」
「はい」
全裸になった美月を、俺は押し倒した。
3時間、俺は美月を好きなように使った。
何度も何度も、様々な体位で。
彼女は文句一つ言わず、全てを受け入れた。
時間が来ると、美月は服を着て、部屋を出て行った。
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
最後まで、笑顔だった。
◆
別の日、俺は『プレジャーパレス』という施設を訪れた。
旧世代専門の風俗店――いや、この世界では「娯楽施設」と呼ばれている――だ。
エントランスには豪華なシャンデリアがあり、まるで高級ホテルのようだった。
「いらっしゃいませ」
受付の新世代女性が出迎えた。
「どのコースになさいますか?」
メニューを見ると、様々なプランがある。
『スタンダード』 - 個室で旧世代1体と60分 8000円
『プレミアム』 - 高級個室で旧世代1体と120分 15000円
『ハーレム』 - 旧世代3体と同時に180分 35000円
『カスタマイズ』 - 旧世代の外見や性格を一時的に変更可能 追加10000円
「ハーレムで」
「かしこまりました。お好みのタイプは?」
「女子大生風の子を3人」
「承知しました。こちらへどうぞ」
案内された部屋は広く、大きなベッドが置かれていた。
壁には様々な「道具」が並んでいる。
数分後、3人の旧世代女性が入ってきた。
全員、20代前半くらいに見える。
それぞれ違う髪色と体型だが、どの子も美しい。
「本日はよろしくお願いします」
3人が同時にお辞儀をした。
俺は3人を好きなように使った。
一人に口で奉仕させながら、もう一人を抱き、残りの一人には自慰をさせる。
彼女たちは何の抵抗もなく、俺の命令に従った。
3時間後、俺は満足して店を出た。
◆
さらに別の日、俺は『ボディワークス』というショップを訪れた。
旧世代の「カスタマイズ」を行う専門店だ。
「いらっしゃいませ」
店員――新世代機械化人間の男性――が出迎えた。
「カスタマイズを希望される旧世代は、お連れですか?」
「ええ、外で待たせています」
「お呼びください」
俺は美咲を呼んだ。
美咲は店内に入り、俺の隣に立った。
「では、どのようなカスタマイズを?」
店員が聞いた。
「外見を少し変えたいんです。髪の色とか」
「承知しました。こちらのカタログをご覧ください」
タブレットには、様々なオプションが表示された。
『髪色変更』 5000円
『髪型変更』 3000円
『瞳の色変更』 8000円
『肌の色調整』 10000円
『体型調整(バスト・ヒップ・ウエスト)』 各15000円
『性的機能強化』 20000円
『音声パターン追加』 8000円
「髪を金髪にして、瞳を青くしたいんですが」
「かしこまりました。合計13000円になります。作業時間は約30分です」
店員は美咲を奥の部屋に連れて行った。
30分後、美咲が戻ってきた。
金髪に、青い瞳。
まるで外国人のような外見になっている。
「どうですか?」
「完璧です」
俺は満足した。
「なお、元に戻す場合は、同額の料金で可能です」
「わかりました」
カスタマイズによって、俺は美咲を飽きずに楽しめる。
気分によって外見を変えられるのだ。
◆
街では、他にも様々な旧世代ビジネスが栄えていた。
『デンジャラスワークス』
危険作業専門の請負業。
高所作業、放射能汚染区域の清掃、有毒物質の処理。
人間には危険すぎる仕事を、旧世代が担当する。
俺はその会社の営業所の前を通りかかったことがある。
中では、防護服を着た旧世代たちが、黙々と準備をしていた。
『オールドジェン・メンテナンスセンター』
旧世代の修理・メンテナンス専門店。
故障した旧世代を修理したり、定期メンテナンスを行う。
ショーウィンドウには、分解された旧世代の身体が展示されていた。
腕、脚、頭部。まるで車のパーツのように。
『タレントエージェンシー』
旧世代を「タレント」として貸し出す会社。
イベントのコンパニオン、モデル、俳優として活用される。
もちろん、感情はないので、どんな役でも完璧に演じられる。
◆
ある日、俺は木村と街を歩いていた。
「なあ、佐藤」
「ん?」
「旧世代ビジネス、すげえよな。本当に何でもあるわ」
「ああ。便利だよな」
「この前、危険作業の会社の株買ったんだ。めっちゃ伸びてる」
「へえ」
「考えてみれば、旧世代が増えれば増えるほど、経済が回るんだよな」
木村は笑った。
「そうだな。人間のコストは下がるし、労働力は無限にあるし」
「最高の経済システムだよ」
俺たちは、大型ディスプレイの前で足を止めた。
そこには、新しい旧世代ビジネスの広告が流れていた。
『新サービス:パーソナル・コンパニオン』
『あなただけの旧世代を、24時間365日レンタル』
『月額98000円から』
「お、これいいな」
木村が言った。
「所有するより安いし、飽きたら交換できる」
「確かに」
ディスプレイには、様々なタイプの旧世代が表示されている。
清楚系、ギャル系、大人しい系、活発系。
全て、注文可能。
「この世界、本当に楽園だよな」
木村が呟いた。
「ああ。空っぽの人形たちが、俺たちのために働いてくれる」
俺は頷いた。
空を見上げると、ドローンが飛び交っている。
それを操縦しているのも、旧世代だ。
街の清掃も、インフラの維持も、危険な仕事も。
全て、旧世代が担っている。
そして俺たちは、彼らを「商品」として楽しんでいる。
これが、新しい世界。
空っぽの楽園。
永遠に続く、この楽園で、俺たちは生きていく。