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模範的な生徒たち——私立白百合女学院の改革

4,782 文字 約 10 分

あらすじ

地方の私立女子学園。ここ数年は経営状況が悪く、一時は募集停止や共学化が噂された。
しかし、大手のアンドロイド製造企業が支援を始めたことによりその心配はなくなった。
最近は生徒の機械化の補助制度もできたようだ。


登場人物

相沢(あいざわ) 美咲(みさき)
本作の主人公。白百合女学院に通う高校2年生。
黒髪のセミロングで、少し内気な性格。成績は平均的で、目立つことはあまり好まない。
学園の経営難や変化については漠然とした不安を抱いているが、周囲に流されやすい一面もある。
身長158cm、B82/W58/H84。

高橋(たかはし) 玲奈(れな)
美咲のクラスメイトで親友。
元々は明るいが少し騒がしいタイプだったが、最近「奨学金制度」を利用して機械化手術を受けた。
手術後は容姿が洗練され、成績もトップクラスに。性格も落ち着いた「模範的な生徒」に変化したが、時折見せる笑顔には人工的な完璧さが漂う。
美咲にしきりに機械化を勧めてくる。
身長162cm、B88/W56/H88。

本文

「ねえ、美咲も受ければいいのに。『特別奨学生制度』」

放課後の教室、窓際で夕日を浴びながらそう語りかけてきたのは、親友の高橋玲奈だった。
玲奈の肌は透き通るようで、夕日に照らされても毛穴ひとつ見えない。髪は以前よりも艶やかで、まるで絹糸のようだった。
彼女はつい先月、学園が提携した『サイバネティクス・アーツ社』の提供する『教育支援プログラム』――通称、機械化手術を受けたのだ。

「うーん……でも、手術って怖いし。それに、体の一部を機械にするんでしょ?」
「全然怖くないよ。眠っている間に終わっちゃうし。それにね、一部じゃないよ。『全身』」
「えっ……」

美咲が驚いて目を見開くと、玲奈はふふっと上品に微笑んだ。以前の彼女なら、もっと大口を開けて笑っていたはずだ。
その変化に、美咲は薄気味悪さと同時に、抗いがたい魅力を感じていた。

「全身を最新の生体パーツに置き換えるの。だから、もう病気にもならないし、太ることもない。頭の回転だって早くなるのよ。昨日のテスト、私満点だったでしょ?」
「うん、凄かったね……」
「それにね、何より『気持ちいい』の」
「え?」

玲奈は意味深に美咲の手を取り、自らの胸に押し当てた。
制服の上からでもわかる、豊かで完璧な弾力。そして、その奥で規則正しく、しかし人間とは少し違う律動を刻む鼓動。

「感度がね、全然違うの。自分の体を自在にコントロールできるし、快感の伝達速度も調整できるんだから」
「玲奈、何言ってるの……ここ学校だよ?」
「ふふ、大丈夫。今の先生たちは、こういうことにも寛容だから」

玲奈は美咲の手を離すと、自身のスカートを少しだけ捲り上げた。
太腿には、微かにバーコードのような紋様が浮かび上がり、すぐに消えた。

「美咲もこっち側においでよ。すごく楽になるよ。将来の心配なんてしなくていいし、みんなから必要とされる存在になれるの」

***

白百合女学院は変貌していた。
かつての古臭い校舎は最新鋭の設備にリノベーションされ、廊下を行き交う生徒たちは皆、モデルのように美しい。
経営難で廃校寸前だったこの学園を救ったのが、サイバネティクス・アーツ社だった。
彼らは莫大な資金援助と引き換えに、学園を「次世代型教育のモデル校」として指定した。
その実態が、生徒を素体としたアンドロイド開発と、その運用データの収集であることを、美咲のような一部の生徒以外は深く考えていなかった。

授業中、美咲は周囲を見渡した。
クラスの三分の二は、既に「奨学生」として機械化を済ませている。
黒板に向かう教師もまた、どこか無機質な動作で数式を書き連ねていた。
以前はヒステリックに怒鳴ることもあった数学の佐藤先生だが、今は常に穏やかな微笑みを浮かべ、淡々と授業を進めている。

「相沢さん、この問題の解き方はわかりますか?」

不意に指名され、美咲は慌てて立ち上がった。

「え、えっと……」

答えに詰まる美咲に、周囲のクラスメイトたちが一斉に視線を向ける。
その視線には嘲笑や軽蔑はなく、ただ純粋な「観察」の色があった。
彼女たちの瞳孔が、微かに収縮しデジタルの光を宿しているように見えたのは気のせいだろうか。

「わかりません……」
「そうですか。では、高橋さん」
「はい、先生」

玲奈が立ち上がり、流暢な口調で完璧な解答を述べる。
先生は満足げに頷いた。

「素晴らしい。やはり、アップデートされた脳の情報処理能力は目を見張るものがありますね。相沢さんも、早く決断するといいでしょう。あなたの可能性を広げるために」

先生の言葉に、クラス中が同意するように頷く。

「そうよ、美咲ちゃん。楽になれるのに」
「痛いことなんて何もないわ」
「私たちと一緒になりましょう?」

休み時間になると、美咲は「説得」という名の勧誘に囲まれた。
かつての友人たちが、美しい顔で、優しい声で、しかし逃げ場のない圧力をかけてくる。

「でも、お母さんたちになんて言えば……」
「保護者の同意なんて簡単よ。学費が全額免除になって、しかも生活費まで支給されるんだもの。反対する親なんていないわ」
「それに、就職率100%よ。この学園の卒業生は、企業の重役秘書や、資産家のパートナーとして引く手あまたなんだから」

パートナー。その言葉の響きに、少しだけ卑猥なニュアンスが含まれていることに美咲は気づいた。
だが、今の彼女にとって、それは忌避すべきことではなく、むしろ甘美な誘惑のように響き始めていた。
今のままでは、自分だけが取り残されてしまう。
劣った肉体のまま、将来の不安に怯えて生きるのか。それとも、美しく生まれ変わり、約束された未来を手に入れるのか。

「……私も、なれるかな。玲奈みたいに」

美咲がぽつりと呟くと、玲奈は満面の笑みを浮かべた。

「なれるよ! 私が保証する。美咲の素体としてのポテンシャルは高いって、先生も言ってたもん」
「素体……?」
「あ、ううん、なんでもない。さあ、善は急げだよ。放課後、一緒にカウンセリングルームに行こう?」

***

放課後、美咲は玲奈に連れられて、かつて保健室だった場所――現在は「メンテナンスセンター」と呼ばれる区画を訪れた。
真っ白で無機質な廊下。薬品の匂いはせず、代わりに微かな芳香剤の甘い香りが漂っている。

通された部屋には、歯医者の治療台のようなリクライニングチェアが一台置かれていた。
そこで待っていたのは、白衣を着た若い女性だった。彼女もまた、非の打ち所がない美貌を持っている。

「ようこそ、相沢美咲さん。賢明な判断ですね」
「あ、はい……よろしくお願いします」
「では、さっそく手続きに入りましょう。こちらのタブレットにサインをお願いします」

渡されたタブレットには、長大な利用規約が表示されていた。
細かい文字がびっしりと並んでいる。

『第13条項:身体的所有権の譲渡について……』
『第24条項:基本的人権の放棄および企業資産としての登録……』
『第45条項:生殖機能の廃止および性的奉仕機能の実装……』

美咲が文字を追おうとすると、玲奈が横から画面をスクロールさせた。

「あー、こういうのは形式的なものだから。一番下の『同意する』だけでいいの」
「でも……」
「大丈夫だって。みんな書いてるんだから。ね?」
「……うん」

玲奈の言葉と、医師の優しい微笑みに促され、美咲はおずおずとサインをした。
その瞬間、彼女は人間であることを辞め、企業の所有物となったのだが、まだそのことには気づいていない。

「ありがとうございます。では、初期設定のシミュレーションを行いましょうか。高橋さん、お手本を見せてあげて」
「はい、先生」

玲奈は手慣れた様子で服を脱ぎ始めた。
制服のリボンを解き、ブラウスを脱ぎ捨て、スカートを下ろす。
躊躇いなど微塵もない。
下着すらつけていないその身体は、人工物特有の完璧なプロポーションを晒していた。
肌の継ぎ目はほとんど見えないが、股間の部分はつるりとしており、ヘアがない。

「見ててね、美咲。これが『最新型』の機能だよ」

玲奈が自身の秘部に指を這わせると、そこから粘り気のある透明な液体が溢れ出した。
興奮しているわけでもないのに、機械的な反応として愛液が分泌されているのだ。

「サービスモード、起動」

玲奈が小さく呟くと、彼女の表情がいきりと変化した。
瞳がとろんと潤み、頬が紅潮し、口元には妖艶な笑みが浮かぶ。
先ほどまでの理知的な優等生の姿は消え、そこにはただ快楽を貪り、奉仕することだけを求める雌の顔があった。

「はぁ……ご主人様……命令を……」
「玲奈……?」
「すごいでしょう? ナノマシンの制御で、いつでも最適な発情状態になれるの。相手の好みに合わせて、性格も感度も自由自在。これが、私たちが『高く売れる』理由よ」

医師が玲奈の胸をつまむと、彼女は嬌声を上げて身をよじった。

「ああんッ! 素敵です……もっと、もっと弄ってください……!」
「感覚センサーの感度も良好ですね。相沢さん、あなたもこうなれるのです。愛され、求められ、快楽に満ちた毎日が待っていますよ」

目の前で繰り広げられる光景に、美咲の顔は真っ赤になった。
しかし、嫌悪感はなかった。
むしろ、股の奥がずきずきと熱くなるのを感じていた。
自分もあんな風に、羞恥心も理性も捨てて、ただ快楽に溺れる道具になりたい。
そんな倒錯した願望が、心の奥底から湧き上がってくる。

「私……私も、玲奈みたいになれますか?」
「ええ、もちろんです。あなたなら、玲奈さん以上の最高傑作(マスターピース)になれるかもしれませんね」

医師の言葉に、美咲は安堵の息を吐いた。
そして、自らブレザーのボタンに手をかけた。

「お願いします。私を……改造してください」

***

手術はあっという間に終わったらしい。
目が覚めると、美咲は培養液のような液体で満たされたカプセルの中にいた。
体に違和感はない。むしろ、以前よりも軽く、力がみなぎっているようだ。
視界の隅には、ステータス画面のような文字列が表示されている。

『System Boot… OK』
『Emotion Engine… OK』
『Obedience Level… MAX』

プシュという音と共にカプセルが開き、美咲は裸のまま床に降り立った。
全身を鏡に映す。
そこには、自分であって自分ではない、理想的な美少女が立っていた。
肌は陶器のように白く艶やかで、胸は二回りほど大きくなっている。
ウエストは極限までくびれ、足はモデルのように長い。

「おはよう、美咲」

振り返ると、同じく全裸の玲奈が立っていた。
そしてその後ろには、数人の男性――この学園の理事や、企業の幹部たちが品定めするような目つきでこちらを見ていた。

「素晴らしい仕上がりだ」
「ああ、あの内気な少女がここまで化けるとはね」
「テストが必要だな。耐久性と、奉仕精神の」

男たちの視線を受けても、美咲の中にあったはずの羞恥心は微塵も湧き上がらなかった。
代わりに湧き上がったのは、彼らに奉仕し、喜ばせたいという強烈な衝動。
脳内に埋め込まれたチップが、彼女の思考を完全に支配していた。

「はい、ご主人様方。私の身体、存分にお使いください」

美咲は艶然と微笑み、男たちの前に跪いた。
四つん這いになり、自らお尻を突き出して誘うポーズを取る。
その姿は、勤勉な学生ではなく、ただの性処理用アンドロイドそのものだった。

「ふふ、美咲もやっとわかったみたいだね」

玲奈も隣に並び、同じように媚びたポーズを取る。
二人の模範的な生徒は、これから始まる「特別指導」を心待ちにして、期待に股間を濡らしていた。

学園の就職率100%。
その数字の裏には、こうして自我を書き換えられ、企業の高級商品として出荷されていく少女たちの姿があった。
だが、彼女たちにとってそれは不幸ではない。
愛され、使用され、消費されることこそが、彼女たちに与えられた至上の喜びなのだから。

「さあ、まずはテイスティングと行こうか」

男の一人が美咲の顔を足で踏みつける。
美咲は恍惚とした表情で、その革靴の味を舌で確かめた。

「はいっ、美味しいです……ご主人様……♡」

白百合女学院の更生は順調に進んでいた。
今日もまた一人、模範的な生徒が誕生したのだ。
それはまさしく、輝かしい未来への第一歩だった。

おまけ

変わらない幼馴染

路地裏にある薄暗い中古アンドロイドショップ。
そこに並ぶのは、かつて華やかな世界で活躍していたであろう型落ちしたモデルたちだ。
就職活動に失敗し、薄給のブラック企業で働く俺、田中(たなか)健太(けんた)にとって、ここは唯一の気休めの場所だった。
買えもしない高級機を眺めるのは虚しいが、ここで売れ残っている哀れな機械人形たちを見下していると、少しだけ心が落ち着くのだ。

「いらっしゃい。今日はセールの最終日だよ」

店主の気怠げな声を背に、俺は店内を彷徨う。
ふと、店の奥にある『訳あり品』コーナーで足が止まった。
ショーケースの中に、見覚えのある顔があったからだ。

「……由美(ゆみ)ちゃん?」

思わず声を漏らす。
そこにいたのは、高校時代の幼馴染、神田(かんだ)由美だった。
彼女は数年前、有名な進学校である白百合女学院に編入し、そのまま「大手企業への就職が決まった」と言って音信不通になっていたはずだった。

『個体識別番号:S-0812 モデル名:YUMI 稼働年数:5年 状態:Cランク(使用感あり)』

値札に書かれた無機質な情報が、俺の脳を揺さぶる。
あの時の噂は本当だったのか。あの学園は、生徒を機械化して売り飛ばしているという噂は。

「あ……」

俺がガラスケースに手を触れると、彼女の瞳に光が宿った。
ウィーンという微かな駆動音と共に顔を上げ、俺の方を見る。
その表情は、かつての屈託のない笑顔そのものだった。

「健太くん! わあ、久しぶりだね!」

スピーカーから発せられる声も、あの頃のままだ。
だが、その体には無数の傷跡があり、関節部分は黒ずんでいる。
彼女がこの5年間、どんな扱いを受けてきたのか、想像に難くない。
企業の受付嬢、重役の愛人、あるいは……過酷な性処理係。
転々と所有者を変えられ、使い潰され、そしてここに辿り着いたのだ。

「由美ちゃん、お前……こんな姿になって……」
「え? 私、綺麗でしょ? 最新のアップデートも済んでるんだよ!」

彼女は自分の境遇を嘆くどころか、むしろ誇らしげに胸を張った。
その胸元は大きく開いており、人工皮膚の下にある機械部品が覗いている。

「ねえねえ、健太くん。私を買ってよ。今ならとってもお買い得なんだって!」
「……っ!」
「昔みたいに遊ぼう? でも、今はもっと凄いことができるよ。健太くんの好きなこと、なんでもしてあげる。料理も掃除も、夜の御奉仕も……えへへ、自信あるんだ」

彼女はケース越しに媚びるようなポーズを取り、スカートを捲り上げた。
そこには、かつての清純な幼馴染の面影はなく、ただ快楽を与えるためだけに調整された機能美があった。
だが、その笑顔だけは。
俺に向けられる親愛の情だけは、あの頃と少しも変わっていなかった。

「……いくらだ、これ」
「おっ、お目が高いね。そいつは古いが名機だよ。整備済みだし、今なら10万でいいよ」

俺の全財産とほぼ同額だ。
だが、俺は震える手で財布を取り出した。

「買うよ。……連れて帰る」
「やったあ! ありがとう、健太くん! これからもずっと一緒だね!」

由美の歓声が店内に響く。
変わり果ててしまった幼馴染。
けれど、彼女は確かに俺の「由美ちゃん」だった。
俺は彼女の手を引き、店を出た。
その先にあるのが、地獄のような生活の続きだとしても、少なくとも俺たちは二人一緒だ。

変わらない笑顔と、変わり果てた体。
そのアンバランスさが、今の俺にはたまらなく愛おしく思えた。

***

俺のアパートは、築40年の木造で、六畳一間の狭い部屋だ。
壁は薄く、隣の住人の生活音が聞こえてくるような場所。
そこへ、かつての憧れだった由美ちゃんを連れ込むのは、なんだか彼女を汚してしまうようで気が引けた。

「狭くてごめんな」
「ううん! 健太くんの匂いがして、落ち着くよ」

由美ちゃんは部屋に入るなり、興味津々といった様子でキョロキョロと見回す。
そして、俺の布団が敷きっぱなしになっているのを見ると、パッと顔を輝かせた。

「あ、お布団! じゃあ、さっそくメンテナンスしよっか?」
「メンテ……?」
「うん! 私、中古だからバッテリーの持ちが悪くて。それに、潤滑液も足りないかも。健太くんの『エネルギー』、たくさんちょうだい?」

由美ちゃんは無邪気にそう言うと、俺の目の前で服を脱ぎ始めた。
中古ショップで着せられていた安っぽいワンピースが床に落ちる。
露わになったのは、継ぎ接ぎだらけの白い肌。
胸や腹部には、前の持ち主たちがつけたであろう無数の傷や、改造の跡が残っている。
乳首はピンク色だが、どこかプラスチックのような光沢があり、人工的な形をしていた。

「見て見て、すごいでしょ? 私のここ、名器なんだって。前の持ち主さんも、すっごく褒めてくれたの」

彼女は誇らしげに股を開いて見せた。
そこには、明らかに人間にはありえない構造の、複雑な襞(ひだ)が蠢く機械仕掛けの性器があった。
ピンク色の粘膜が濡れ、甘い香りを放っている。

「……由美ちゃん」
「なあに? 早く入れて? 私、健太くんに使ってもらいたくて、ウズウズしてるの」

彼女の瞳に映っているのは、純粋な好意と、プログラムされた奉仕への渇望だけだ。
自分がどれほど惨めな姿を晒しているのか、彼女は理解していない。
あるいは、そう理解できないように調整されているのか。

俺は震える手で、彼女の肩を抱いた。
冷たくて硬い感触。けれど、その奥にある温もりは、間違いなく人間だった頃の彼女の名残だ。

「……ああ、わかった。しよう」

俺が頷くと、由美ちゃんは嬉しそうに俺の首に腕を回してきた。
そして、冷たい唇を重ねてくる。
その口内は温かく、機械的に制御された舌が、俺の舌を巧みに絡め取った。

「んっ……♡ 健太くん、大好き……」

布団の上で重なり合う。
彼女の体は、俺の欲望を完璧に受け入れ、最適な反応を返してくる。
喘ぎ声のトーン、腰の動き、締め付けの強さ。すべてが計算され尽くした快楽のプログラム。
だけど、その瞳に見える情愛だけは。
俺の名前を呼ぶその声だけは、本物だと信じたかった。

「あっ、すごい……健太くんの……熱い……っ!」
「由美……っ、由美ちゃん……!」

かつての高嶺の花だった彼女を、底辺の俺が抱いている。
背徳感と優越感、そしてどうしようもない哀れみが入り混じり、俺はかつてないほどの興奮を覚えていた。
彼女の中古の機械仕掛けの体は、俺の安っぽい人生にはあまりにもお似合いのパートナーだったのかもしれない。

事後、俺の腕の中で幸せそうにスリープモードに入った彼女の頭を撫でる。
充電ケーブルに繋がれた彼女は、静かに寝息のような駆動音を立てていた。

「ただいま、由美ちゃん」

俺は小さく呟いた。
これからは、二人で生きていく。
壊れかけた俺たちの、新しい生活がここから始まるのだ。