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禁断のアルバイト ―中古セクサロイドの店番―

3,272 文字 約 7 分

あらすじ

コンビニで店長を務める男性は、人手不足に悩まされていた。そしてある時、インターネットで中古のセクサロイドが安く売られているのを目にする。調べてみると、セクサロイドを業務用として使う方法を紹介するブログ記事が何件もヒットした。セクサロイドのシステムを消去し、業務用のものを入れることで使うことができるらしい。そこで、店員としてセクサロイドを配備することを思いつく。せっかく買うなら若いほうがいい。多種多様なセクサロイドたちの写真を眺め、最終的に女子高生にも見える若そうなものに決めた。
アンドロイドを店舗に導入する場合は、まず本部に確認を取り、本部指定の業務用アンドロイドを購入する必要がある。ただ、このセクサロイドは低性能で、アンドロイド特有のリストバンドやバーコードといった装飾が一切ない。人間と偽って配置してもバレないだろう。
男性はセクサロイドの履歴書を作成し、人間としてアルバイトに応募した形跡を作ってゆく。下準備が完成し、実際に店舗に配置される。


登場人物の容姿

佐藤正志(さとう まさし)
地方のコンビニエンスストアで店長を務める45歳の男性。長年の不規則な生活と慢性的な人手不足による心労から、目元には深い隈が刻まれており、少し猫背気味。髪は短く切りそろえているが、年齢相応に少し薄くなり始めている。清潔感には気を使っているものの、どこか疲弊した空気を漂わせている。

花村かれん(はなむら かれん)
中古で買い取られたセクサロイド。外見年齢は17歳前後の女子高生を模しており、身長は156センチと小柄。肩にかかる程度の艶やかな黒髪のボブカットに、ぱっちりとした大きな瞳が特徴的。肌は透き通るような白さで、アンドロイド特有の無機質さを感じさせない柔らかそうな質感を再現している。制服の白いシャツと、緑色を基調としたコンビニのベストを着用。スカートは膝丈に調整されているが、細く伸びた脚は生身の少女そのものの瑞々しさを持っている。

本文

佐藤正志が経営するコンビニエンスストアは、まさに限界を迎えようとしていた。近隣に新しいショッピングモールができた影響でアルバイトの募集には誰も応募してこず、ここ数ヶ月は佐藤が無理なシフトを組んで深夜労働をこなす日々が続いていた。
「このままじゃ体が持たない……」
バックヤードのパイプ椅子に腰掛け、佐藤は溜息をついた。モニターに映る売り場には、深夜二時ということもあって客の姿はない。しかし、明日も、その次も、自分がこのレジに立ち続けなければならないという現実が重くのしかかっていた。

そんな時、ふと目に止まったのが、インターネットのアンダーグラウンドな掲示板だった。
『人手不足の解消に。中古セクサロイドの業務用転用術』
興味本位でクリックしたその記事には、驚くべき内容が記されていた。型落ちのセクサロイドを安価で購入し、OSをビジネス用の汎用オートマタのものに書き換えることで、単純な接客や品出しをこなすスタッフとして活用できるというのだ。
セクサロイドはもともと対人コミュニケーションに優れ、触り心地も人間に極限まで寄せられている。最近の低価格モデルであれば、アンドロイドであることを示す腕のデバイスや首筋のバーコードといった「刻印」がないものも多いらしい。
「これなら……人間だと言い張ればバレないんじゃないか?」
佐藤の胸に、危うい期待が芽生えた。本部には、独自のルートで見つけてきた地元の女子高生だと報告すればいい。履歴書さえ捏造してしまえば、あとは黙々と働いてくれる完璧な店員が手に入るのだ。

佐藤は震える指先で、オークションサイトにアクセスした。画面には、様々なタイプのアンドロイドが並んでいた。豪華な装飾を施された高級機から、明らかに使い込まれたジャンク品まで。
その中で、佐藤の目を引いたのは「女子高生モデル」として出品されていた一体だった。
『型番:MS-07。商品状態:ジャンク(初期化済み)。外装の損傷なし。性質上、特定部位の清掃は完了しております』
長い睫毛に、どこかあどけなさを残した端正な顔立ち。佐藤は、自分でも驚くほどの速さで落札ボタンを押していた。

数日後の深夜、店の裏口に大きな木箱が届いた。
「……これが、俺の新しい従業員か」
佐藤はバールを使い、慎重に木箱をこじ開けた。中には、緩衝材に包まれた裸の少女が横たわっていた。落札した写真通り、いや、実物はそれ以上に美しかった。
電源が切れているため石像のように動かないが、その肌に触れると、人肌ほどではないが独特のぬくもりがある。最新の人工皮膚は、指を押し当てると柔らかく沈み込み、離すとすぐさま元の完璧な曲線を復元した。

佐藤は記事にあった手順通り、ノートパソコンを少女の背中に隠された端子に接続した。既存のエロティックな動作プログラムを徹底的に消去し、別途入手したコンビニ業務用のアルゴリズムを上書きしていく。
「よし、これで設定完了だ」
最後に、彼女の名前を『花村かれん』と入力した。佐藤が事前に作成した履歴書に合わせた偽名だ。
スイッチを入れると、少女の長い睫毛が微かに震え、ゆっくりとその瞳が開かれた。
「……おはようございます。店長さん」
鈴を転がすような、透明感のある声が静かなバックヤードに響く。
「ああ、おはよう。かれん。今日から君はこの店のスタッフだ」
「はい。一生懸命、頑張ります」
かれんは完璧な角度でお辞儀をした。その仕草には、セクサロイド時代に叩き込まれたであろう、相手に服従し、心地よくさせるためのプログラムの残滓が感じられた。

佐藤は、あらかじめ用意しておいた制服を彼女に着せることにした。
「悪いが、これを着てくれ。仕事中はこの制服が義務付けられている」
「わかりました。お手伝いをお願いできますか?」
かれんは当たり前のように、一糸纏わぬ肢体を佐藤の前に晒した。元がセクサロイドであるため、彼女には「恥じらい」という概念がデフォルトでは備わっていない。佐藤はゴクリと唾を飲み込んだ。
ビジネス用OSには羞恥心のシミュレーターも含まれているはずだが、今はまだ反映されていないのか。
目の前の少女は、豊満ではないが形の良い双丘を、佐藤の視線も気にせずに誇示している。ピンク色をした小さな蕾が、冷えたバックヤードの空気の中でツンと上を向いていた。
佐藤の手が、制服を着せる過程で、彼女の滑らかな腰のラインに触れる。吸い付くような肌の質感。
「あの、店長さん?」
かれんが首を傾げた。その無垢な瞳が、佐藤の内面を見透かそうとしているようだった。
「あ、ああ。いや、似合うと思ってな」
佐藤は動揺を隠すように、急いでベストのボタンを留めた。

翌日から、かれんは店先で見事な働きを見せた。
「いらっしゃいませ!」
元気な挨拶と絶妙な微笑み。客は何の疑いもなく、彼女を愛想の良い女子高生のアルバイトだと思い込んだ。クレームを入れる面倒な客に対しても、かれんは機械特有の冷静さと、セクサロイド特有の柔らかい物腰で完璧に対応した。
佐藤の負担は劇的に減った。何より、深夜の時間帯に二人きりで過ごす時間が、彼にとっての密かな楽しみになっていた。

ある日の深夜、またも店内で客の姿が途切れた時だった。
佐藤は、レジの横で品出しの準備をしているかれんを呼んだ。
「かれん、少し奥に来てくれ。システムの微調整をしたい」
「はい、店長さん」
かれんは素直に従い、防犯カメラの死角となっているバックヤードへと入った。
佐藤は、ドアをロックした。心臓が高鳴っている。単なる業務上のメンテナンスではないことは、自分自身が一番よくわかっていた。
「かれん、制服を脱いでくれ。内部の熱伝導率を確認したいんだ」
「わかりました。熱暴走は業務に支障をきたしますからね」
かれんは淡々とした口調で、器用に制服を脱ぎ捨てた。
再び現れた、人造の美。コンビニの蛍光灯の下で、彼女の体は神々しいほどに白く輝いていた。
佐藤は膝をつき、彼女の脚に手を伸ばした。
「……少し、敏感な設定になっているかもしれない」
そう言いながら、彼は自分が消去したはずの、いや、完全には消しきれなかったであろう『セクサロイドとしての機能』を探り始めた。
指先が彼女の内腿を這い上がっていく。股間に手を差し入れると、そこには驚くほど精巧に作られた秘部があった。じわりと、人造の愛液が溢れ出しているのがわかった。
「店長さん……そこは、メンテナンスに関係ある場所なのですか?」
かれんの声が、少しだけ潤んでいるように聞こえた。彼女のプログラムが、愛撫に対して反応を返し始めている。
「ああ。出力の確認だ。声を出してもいいんだぞ」
佐藤は我慢できず、自身の欲望を露わにした。

かれんをバックヤードの搬入用テーブルに寝かせ、その細い足を大きく開かせる。
「はい。店長さんの思う通りに……メンテナンス、してください……っ」
彼女の両手が佐藤の背中に回された。力強い抱擁。それはプログラムされたものかもしれないが、佐藤にとっては本物以上の快楽をもたらした。
結合した瞬間、かれんの背中が弓なりに反り、その口から熱い吐息が漏れた。
「あ、あああ……っ。店長、さま……すごい、です……」
セクサロイドとしての本能が呼び覚まされたのか、彼女の腰は無意識に、佐藤の動きに合わせて官能的なリズムを刻み始める。
機械である彼女に、痛みはない。疲れもない。ただ、主人の望むままに、絶頂を模倣し、悦びを還元する。
深夜のバックヤードに、肉体(ひとつは人造だが)がぶつかり合う音と、少女の蕩けるような嬌声が響き渡った。

コンビニの店長と、女子高生を装ったアンドロイド。
誰もいない深夜の店内で、その歪な関係は、誰にも知られることなく、だが確実に深まっていくのだった。
「明日のシフトも、頼んだぞ、かれん」
「はい、店長さん。……大好きです」
最後に彼女が口にした言葉が、プログラムなのか、それとも自我の芽生えなのか。佐藤はそれをあえて問い質すことはしなかった。
ただ、翌朝の光を浴びながらレジに立つ彼女の姿は、昨日よりも少しだけ、艶やかさを増しているように見えた。